異説・狂人日記 [著:エドゥアルド・ウォーデン]

欄外

事前情報 ■舞台
大正12年。関東大震災の直前の時期。
治安維持法の施行前であり、大衆ものびのびと生活できていた時代。
欧州ではクレペリンやフロイトの活躍があり精神医学が進んでいたが、当時の日本では寺社による加持祈祷などがあった。
当時、脳病については分からないことも多く、投与できる薬の種類も限られていた。

■用語集
監置室…私宅監置(私人が身内の精神病患者を自宅に監禁して世話をする)のための部屋
バルビタール…睡眠薬の一種。『あなた』はこれを十三に投与していた。
ソマトーゼ…滋養強壮剤の一種

ハウスルール 【ハウスルール】
■クリチケシステムについて
・クリティカル1回につき、クリチケ1枚
・保持可能な上限は無制限
・クリチケ1枚につきダイスの振り直し(エンド分岐に関わらないもの)が可能
・1クリのクリチケは、あらゆるダイスの振り直し可能とします。
・エンド分岐に関わるものは「※1クリのクリチケ以外で振り直し不可」と提示します。このダイスロールだけは普通のクリチケで振り直し不可です。

■ファンブル
・なにかがおこる

■スペシャル/初期値成功
・普通の成功と同じ
・戦闘時のスペシャルは基本ダメージ2倍

■ヒプノーシス ※機会があれば提案可
・<精神分析>の半分で振る。
・1d10+10分の時間が必要。
・催眠術により得た情報は信憑性が無い。
■RPについて
・何か言いたいことがあるけど、考え中…そんなときは、メッセージ欄に何かしらを入力しておいてください。または、雑談タブで宣言してください。
・「●●入力中...」と出ている間は、KPは待ちます。
・雑談/メイン等で「こういうことが言いたい/RPがしたい」と宣言してもらえれば、NPCを使って舞台を整えれる…かもしれない (できない場合もあります)

情報

時代背景 《時代背景》
大正十二年という時代は精神医学において一つの過渡期であり、私宅監置と呼ばれる『私人が身内の精神病患者を自宅に監禁して世話をする』という行為が適法であった。これは現在のような精神医学に対する行政の理解も少なく、かつ様々な精神病に効果のある薬が世に出ておらず、精神病院というものの数も患者の数と比べて大変少なかったためでもある。
精神病を意味する言葉としての癲狂という表現が、あまり用いられなくなってきた頃であり、精神病、または脳病という呼称が一般的で、病院の名前も〇〇癲狂院などは〇〇脳病院、或いは〇〇医院などに改めるものもあった。
寺社が現在の精神病院の役割を担っている側面もあったが、そこで行われていた治療行為と言えば、加持祈祷の類や滝壺で水に打たせる程度のものであった。
精神病患者に内職や農作業などを行わせる作業療法などは一定の評価をなされていたが、広場での運動や生産活動を行わせているケースはそれほど多くなく、万を下らない患者が牢獄にも劣るような監置室に死ぬまで閉じ込められるか、或いはただ放置され続けたというのが実情であったようだ。
精神病患者の扱いに関しては内務省、現在の厚生労働省の管轄であり、強制的に入院させる措置を取るときは警察官がそれを担った。私宅監置を行う際にも様々な規定が存在し、監置室の状態や患者の詳細を警察に届け、個別に許可を得る必要があった。しかし実際のところは、多くの市民にとって監置室を設けて患者の面倒を看続ける経済的負担は並大抵ではなく、努力義務に留まっていたのではないか、というのが当時の資料から察せられる実態である。
時代背景としては、関東大震災の直前の時期であり、治安維持法の先駆けとなる『治安維持ノ為ニスル罰則ニ関スル件』が公布されるより前の、比較的市民が自由に暮らす平穏な時代である。
明治後期から大正末期に掛けて、女医の存在も無いではなかったが、男性医師に比べその数は圧倒的に少なかったことに留意されたい。

妹尾 十三 《妹尾 十三》 せのお じゅうぞう
二十一歳男性。少年時代に同級生から乱暴を受けて、精神に変調を来たした。
裕福な家庭であったため、私室を改造した部屋で四年ほど監置されながら、一年前まで探索者の治療に掛かっていた。
偏執病であり、しばしば周囲の人間が自分に害をなそうとしていると言っては暴れだすことがあった。寛解時(病症が落ち着いているとき)は、ごく穏やかで物静かな青年である。
現在は池田脳病院に入院しており、探索者の担当は外れている。
流れとしては、十三の両親が病死したあと、兄の文恒一人で十三の私宅監置には限界があると感じ、池田脳病院へ入院という運びになった。その際、探索者は十三の担当を外れた。
〔注:現在『統合失調症』と呼称されている精神障害『スキゾフレニア(schizophrenia)』は、明治44年(1911年)に医学用語として提案されたが、日本では長く訳語が統一されていなかったため、ここでは全て『偏執病』と呼称している。なお精神分裂病という呼称は昭和から用いられた言葉であり、大正時代には存在していないことを留意されたい〕

妹尾 文恒 《妹尾 文恒》 せのお ふみひさ
三十一歳男性。十三の兄で、骨接を生業にしている。
病身の弟を哀れに思い献身的に面倒を見てきたが、病状の悪化に堪えかね、両親の遺した土地を売り払って十三を脳病院へ入れた。
探索者が十三を担当していた頃は、主に存命中の両親とやり取りしていた為、文恒と直接話したことは殆どなかったが、お互いに顔は見知っている。

真崎 敬之 《真崎 敬之》 まさき のりゆき
五十五歳男性。池田脳病院の医師。
長身痩躯、表情は乏しく、声に感情を乗せずに喋る。探索者とは学会等で顔を合わせることもあり、互いに会えば挨拶を交わす程度の知り合いである。
精神医学に関しては現状を良しとしておらず、どちらかと言えば革新的な立場を取っている。

雑談

語り手 お集まりいただいていますね。

193 はい! あいや、少々お待ち下さい。
すぐもどります。

藺草 戻りました。

語り手 時間通りですね。

メイン

語り手 それでは、これよりクトゥルフ神話TRPG『異説・狂人日記』のセッションを開始します。
本日はよろしくお願いいたします。

エド・ウォーデン ええ、よろしくお願いいたします。

語り手  ────────────

  異説・狂人日記
   
   ───────
  
著:エドゥアルド・ウォーデン

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《導入》
「我邦十何蔓ノ精神病者ハ實ニ此病ヲ受ケタルノ不幸ノ外ニ、此邦ニ生マレタルノ不幸ヲ重ヌルモノト云フベシ。」
呉秀三『精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察』より
時は大正十二年(1923年)八月、夏の盛りである。
探索者のかつての患者であった妹尾十三は、少年時代からひどく精神を持ち崩し、四年ほど私宅監置下に置かれていた。
探索者は一年ほど前まで、この妹尾十三の治療に当たっていた。今では担当を外れて久しいが、とある日、その十三から一通の手紙が届く。

情報

注記 〔注:私宅監置とは精神病患者を座敷牢等の監置室に隔離・監禁することを合法的に認める制度のこと〕

メイン

妹尾 十三 『私にはもはや、人の生活というものに皆目見当がつかなくなってしまったのです。センセに助けてもらわなければ、私の正気はあと一日だって保たないでしょう。どうか後生ですから、私の住まいを訪ねてきてはくれませんか。
柳川県底濱市西区淵ヶ谷三丁目四番十六号 妹尾十三』

語り手 そこには彼の実家の住所が書かれていたが、探索者はこの手紙の主が現在、底濱市北区にある池田脳病院に入院していることを知っている。
奇しくもそのとき、あなたはとある事情で参っていた。
大正八年に精神病院法が制定されて以来、危険な患者の隔離の是非を争った議論が活発にある中で、探索者も自身の立場を表明する論文を求められていたのだ。
とにかく、翌日が休日であったこともあり、精神病患者の入院の実際を改めて見直すために、探索者はこの妹尾十三を訪ねて、池田脳病院へ赴くことになるだろう。
……さて。なにか準備等ございましたら、自宅からシーンを始めることも。なければ池田脳病院から始めることも可能ですが。
いかがなさいますか。

エド・ウォーデン ……態々手紙を送って来るほどだ。
よっぽど切羽つまっているのでしょう。
準備といっても、持ち物に原稿用紙だの資料本だのが足されるばかりで、あとは家のものにいって出るのみ。
病院から始めていただいて結構でございます。

語り手 承知いたしました。
《池田脳病院》
底濱市北区の外れ、人家もまばらな郊外にある精神病院です。評判は悪くなく、自然をごく近くに感じられる環境もよいと感じられるでしょう。
受付に伝えれば、十三の病室を教えてくれるでしょう。

エド・ウォーデン では受付の方に。
「わたくし、ウォーデンと申しますが。
 妹尾十三さんを訪ねてまいりました。病室はどちらでしょうか」

受付 「妹尾さんですね。ご案内いたします」

エド・ウォーデン 「ありがたい。おねがいします」
その人の後ろをついていきます。

語り手 受付はウォーデン先生に軽く頭を下げると立ち上がり、受付を離れ廊下を先に行きます。彼女についていけば、奥の広い部屋へと案内されるでしょう。
妹尾十三の病室は個室というわけではなく、何人かでの大部屋のようです。

エド・ウォーデン なんと。いやしかし、家の事情でありましょう。
私がどうこう言えることではありません……。
「ここが……
 ご案内、有難うございます」
十三くんを探してみます。姿はありますか?

語り手 十三の病室を訪ねると、彼が行儀よく椅子に座ってウォーデン先生を待ち構えているのが見えます。
十三は、現れたあなたを見るや、白い肌をりんご色に染めて前のめりになります。
その顔はとても今年二十二になるとは思えない、あどけない少年のようでした。

妹尾 十三 「ああ、センセ! お越しくださってありがとうございます。いまお茶をお淹れしますね」

語り手 そう言って十三はベッドのシーツを剥がして、ゴソゴソと何かを探し始めます。

妹尾 十三 「いい葉っぱを頂いたんですよ。宇治に、友人がいましてね。さて、どこにしまい込んだのだったか――」

エド・ウォーデン 「ご友人が……ああ、いえ、気を遣わずに……」
強く止めるでもないですが、ふむ……

妹尾 十三 「出しておくと兄が勝手に客に茶を出しておくものですから、戸棚の奥にしまっておいたのです」

語り手 そう言いながら、彼はベッドのシーツをすっかり剥がし、マットレスの裏側を覗きます。

エド・ウォーデン 「なるほど、大事に取っておいてくれたのですね」
戸棚…? マットレスの下を覗いているように見える。
戸棚に隠していたのをマットレスの下に移したのでしょうか。

情報

注記 ※本シナリオでは、KPから心理学を振るよう促すことはない。
 <心理学>を振りたいタイミングでメインタブで宣言してください。

メイン

エド・ウォーデン なるほど、心理学箇所だったのですね……。
では早速振っていただきたく存じます。70です。

語り手 SCCB<=70 心理学 (1D100<=70) > 26 > 成功
彼の様子をじぃっと観察していましたが、彼からは先生を謀ろうなどという様子を感じ取れません。彼は本当に、そのマットレスを戸棚だと思っているようです。
マットレスの下をよく見るのであれば、<目星>をどうぞ。

エド・ウォーデン では屈み込んで見てみましょう。
もしや本当に戸棚なのでは。
CCB<=45 【目星】 (1D100<=45) > 37 > 成功

雑談

エド・ウォーデン わ……(驚愕

藺草 なんで45しか持っていないのだろう。

メイン

語り手 何もありません。シーツの下やマットレスの下に、物など収納できるはずもありません。ベッドの下にも戸棚どころか箱も何もありません。この病室の担当清掃員が毎日綺麗に清掃しているのでしょう。
十三は何もないところを「ない、ない」と言いながら探し、引っ掻き回しているのです。

エド・ウォーデン 未だに……家にいるつもりなのだろうか。

語り手 そう仮定するのであれば、貰った手紙に池田脳病院ではなく妹尾邸の住所が書かれていたことにも合点がいくでしょう。

エド・ウォーデン なるほど。わかりました。
……何が起きたのでしょうか。それとも最初からそうだったのかもしれない……。
「十三君、大丈夫ですよ。
 そういえばわたくしは喉が渇いていませんでした。
 せっかく出していただいても飲みきれないでしょう」

妹尾 十三 「そうでしたか、センセ…」

エド・ウォーデン 「はい、せっかくならば残してしまいたくないですから。
 お茶はまた次のときに」
「十三君、あらためて……こんにちは。
 お手紙をありがとうございます」
「突然のことだったので何事かあったのかとずいぶん心配しましたが、
 お元気そうで安心しました」

妹尾 十三 「センセ、お久しぶりです。こうしてまたお会いできることを楽しみにしていました。ああ、そう手紙。そうなんです、私がセンセにお手紙を差し上げたのは、大事なお話をしたかったのです」

語り手 十三はあなたの手を握ろうとします。<アイデア>をどうぞ。

エド・ウォーデン 「大事な……お話?」
CCB<=85 【アイデア】 (1D100<=85) > 58 > 成功

語り手 あなたは…彼の右手の小指の先が失せていることに気が付けるでしょう。血は出ていないようです。

妹尾 十三 「そうなんです。話というのは、まったくもって、退っ引きがならないのです」

語り手 十三はまた居住まいを正して、真っ直ぐに探索者の目をつめます。

エド・ウォーデン うん? 指切り……? 気になりますが、ひとまず彼の話を聞くことにします。
手を握られる分には、特に障り無く。
「ええ、聞きましょう。
 どうなさったんです」

妹尾 十三 「センセは、昨晩お肉を召し上がりましたか」

語り手 十三はあなたの手を握り、うつむくでしょう。どのようにお答えいただいても構いません。

エド・ウォーデン 「いえ、確か昨晩は……魚を頂きました。
 それが如何しましたか」

妹尾 十三 「──そうですか。まさかセンセは……」
「──人肉を食べたりはなさらないでしょうね」

語り手 十三はブルブルと震えながら声を潜め、辺りを神経質そうに窺ってから、探索者の返答を待たず耳打ちします。

妹尾 十三 「人の肉です。ええ、緊急避難の止むに止まれぬ事情でなく、好きで人の肉を喰らう、食人鬼がいるのです。この世界には、そのような人間が数多くいるのです」

エド・ウォーデン 「……………ひとのにく」

妹尾 十三 「実のところ、私の兄の文恒は食人鬼なのです。そればかりか、この家の下男の真崎という男も忌まわしい人食いなのです。私は散々この家から出ていくよう下男に言いつけてはいるのですが、頑として聞かず、私はほとほと困り果てているのです」
「私の兄は、人を食べたがっている人間です。兄の、目を見ていただければ分かるでしょう。食人鬼の目というものは緑色にぬらぬらと濡れ光っているものです。夜中になれば、隣の部屋から兄の舌なめずりが聞こえてきます」
「兄の持つ本には、『易子而食,析骸以爨〔子を易えて食ひ、骸を析きて爨ぐ〕』とありました。自分の子を食うのは忍びないので、人の子と取り替えて食らうという意味です。死人の骨を割き炊事場の焚付にするという意味です。つまり私は――それが恐ろしくてならないのです」
「兄は骨接の医者でありまして、生来勉強熱心な人でありましたから、なれば支那から取り寄せた本草なにがしという本に載っていた食人について研究をしていたとしても全く不思議のないことです」

語り手 〈医学〉〈薬学〉〈博物学〉をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=75 【医学】 (1D100<=75) > 95 > 失敗

語り手 薬学も振りますか?

エド・ウォーデン 他を……はい、振ります…
CCB<=61 【薬学】 (1D100<=61) > 69 > 失敗
ふふ……博物学に挑戦してもよいでしょうか…

語り手 ええ、かまいませんよ。

エド・ウォーデン CCB<=10 【博物学】 (1D100<=10) > 53 > 失敗

語り手 ウォーデン先生はお家柄か、東方の医学にはあまり通じていらっしゃらないご様子ですね。
十三の言った「本草なにがし」が本当はどういった名前であるか、あなたには思い当たりませんでした。

エド・ウォーデン わかりました。
「本草なにがし……ううん、そうなのですか……
 それは恐ろしいですね」

妹尾 十三 「ええ……兄の部屋にあった本を、読んでしまったのです」

エド・ウォーデン 「なるほど……それはいつ頃のことでしょうか。
 お兄様は最近……その、人の肉についてご興味を持たれたという様子で?」

妹尾 十三 「一年前でしょうか…その際、兄と喧嘩をしまして」
「アニキが私の指を、齧りとったのです」

エド・ウォーデン 「一年前の喧嘩……
 ……指を?」

妹尾 十三 「あのときはアニキがすっかり気狂いになってしまったのだとばかり思っていましたが、なんのことはない、彼はただの人食いだったのです」

エド・ウォーデン 「にわかには信じがたい話ですが……
 君が言うならば、そういったこともあるのでしょう」
「誰か他に、このことは?」

妹尾 十三 「いいえ。センセ以外に言えるはずもありません…」
「下男にでも漏れてしまえば、私の命はあと一日だってないでしょう」

エド・ウォーデン 「然様ですか。
 ……それは一人で恐ろしかったでしょうね」
「十三君、お兄様はいまどちらにいらっしゃるか、
 知っていますか?」
その”隣の部屋にいるアニキ”と思しき人? にも後で話を聞いてみようかな…。

妹尾 十三 「兄は骨接の仕事をしているか、そうでなければ自室にこもっているかと思います」
「そうです! センセ、確かな、確かな証左があるのです! アニキが人食いである…」
「このキャビネットの中に入れていたのです」

エド・ウォーデン 「キャビネット……」

語り手 そういって十三はまたベッドシーツを剥がし始めます。
ええ、彼がキャビネットと言っているものはベッドシーツであったり、マットレスであったりします。

エド・ウォーデン うん……何をどうさがしても見つからないだろうな。

妹尾 十三 「ない…ない。ない……」

エド・ウォーデン 「十三くん、大丈夫ですよ。
 もし、この家に君のお兄様が共に暮らしているというのなら、
 証拠を掴まれたところで隠してしまうのでしょう」

妹尾 十三 「ああきっとアニキに見つかってしまったのだ」

エド・ウォーデン 「うん、君の探しものは然うして見つからないのです」
「ちなみに、それはどのようなものだったのですか?」

妹尾 十三 「小さいものです、うっかり落としてしまったかも。いえ、そうならないようにちゃんとしまっておいて……ああ、センセ、ならばセンセ、秘密を知った僕は、もうすぐ食べられてしまうでしょうか」
「あれがないと、僕はもう死んでしまうかも知れません」
「ああセンセ、僕が死んだら、もし僕が死んで、もし骨が残ったら――どうかお願いしたいことがあります。胸が、詰まりそうです。今度ぜひ、お話をさせてください。今日はもう、頭が破れてしまいそうです」

語り手 みるみる青ざめていく顔で、十三はあなたに縋りついて額をこすりつけます。

エド・ウォーデン 「……ええ、もちろん。
 またお会いしましょう。たくさんお話をして、たくさん心配して、少し疲れてしまいましたね」
肩をポンポンと軽く叩きつつ。
論文のことが……頭を過るのを感じながら、
「今日はもう休んで。疲れたときは眠ってしまうのが一番ですよ」
まさか勝手に薬を処方するわけにも行くまい。
……彼の薬の時間はまだ…なんだろうか。

語り手 そうですね…あなたがそう声をかけると十三は顔を上げて目を見開き、こう訴えるのです。

妹尾 十三 「薬を、薬をください! ここの薬は頭がぼんやりとするばかりだ! 前の薬をください! ぼんやりとして――僕はすっかりおかしくなってしまった!」

語り手 それきり十三は頭を抱えて唸り、うずくまってしまいます。

エド・ウォーデン 「十三君……」
なるほど、飲まずに置いてある薬などはあるのでしょうか…。
屑籠に捨てられていたり…?

語り手 屑籠を見てみますが、そういったごみは見つからないでしょう。
今の妹尾十三の担当医は真崎という男です。彼を探しに行ってもいいでしょう。

エド・ウォーデン そうですね、やはり勝手に処方するというわけには行きません。
十三君には悪いですが、少しこのまま耐えていただくしか…。

妹尾 十三 「センセ……」

エド・ウォーデン 「十三君、お家の方と少しお話をしてきますからね。
 お薬のお話はそのあとにしましょう」

妹尾 十三 「センセ、あには…あにはひとくいなのです」

語り手 そう呻きながらベッドの上で身体を丸めますが、あなたから手を離して頭を抱えています。立ち去ることは容易でしょう。

エド・ウォーデン 「ええ、そうかも知れません。
 でもまさか、白昼堂々、私を食べてしまうことはないでしょう」
面白い本でも持ってきたら良かったな……。
次はそうしよう。

妹尾 十三 「…………」

エド・ウォーデン 「そうだな……
 以前私と読んだ本を覚えていますか。
 『血は歯車のやうに』とか」

妹尾 十三 「ええ、はい…はい。センセと読んだ本は全て覚えています」

エド・ウォーデン 「いずれその話をしませんか。
 内容を覚えておられればいいのですが」
頭が不安なことでいっぱいにならないように、本の事を考えておいてもらおうという魂胆…

妹尾 十三 「きっと…きっと」

語り手 なるほど…であれば、彼を落ち着かせられるか<精神分析>をどうぞ。

エド・ウォーデン はい。
CCB<=71 【精神分析】 (1D100<=71) > 84 > 失敗
無念…。

妹尾 十三 「鬼の子は鬼……鬼の子は鬼……」

語り手 そうぶつぶつとつぶやきながら、十三はベッドシーツに額をこすりつけます。

エド・ウォーデン 行けない方向に思考が向かっている……。
本の選択ミス……

妹尾 十三 「センセ、人食いの子は人食いになるのでしょうか」
「兄は…これから……う、うう……」

エド・ウォーデン 「ううん……肉を食べる人の子どもが必ずしも肉を好むわけではないでしょう。
 本人の意思次第だと思いますよ。私はね…」
ううん……うずくまる背中をぽんぽんとして、お布団をかけて立ち去りましょう。

語り手 あなたが病室を後にすると、ちょうど廊下に長身痩躯の影が通り過ぎます。
それはカイゼル髭を摘まみ上げながら、廊下を歩いているのです。
あなたは彼が真崎医師であることを知っているでしょう。

エド・ウォーデン おや……丁度いいところに。
「……真崎先生。ご無沙汰しております」
近づいていって声をかけましょう。

真崎 敬之 「これはどうも、ウォーデン先生。近頃はいかがですか。妹尾さんはご覧の通りですよ」

エド・ウォーデン 「ええ、はい。
 先程少しお話を。真崎先生は……妹尾のお家の下男になられたとか」
冗談として通じることを願う……

真崎 敬之 「はは。妹尾さんはここを自宅だと思い込んでおりましてね」
「こうして身の回りの世話をさせてもらっているので、まあ確かに。的を射てはおりますな」

語り手 彼は不愉快さを顔ににじませることなくそう話すでしょう。

エド・ウォーデン ご寛容であられる――
「失礼。少し悪巫山戯が過ぎましたね。
 たしかに妹尾さんは、こちらをご自宅と思い込まれているようでした」
「夜、隣のお部屋から兄の舌なめずりの声がするとか……
 戸棚……マットレスに隠しておいた茶葉がないとか……」
「こちらに来てからずっとあの様子ということなのですね……」

真崎 敬之 「ええ。そのように時折ベッドの近くを漁っては、『ないない』と叫び、強く取り乱したようになりますが、まぁ、そのうちよくなります。そうでなければ、一生あのままですな」

エド・ウォーデン 「そのうち……」
「そういえば、会ったときに薬がほしい、と言われましたが。
 今はどのようなお薬を彼に?」

真崎 敬之 「バルビタール…ウォーデン先生の処方されていたものと同じですな。あとは少々痩せぎすですので、ソマトーゼを処方することもあります。咳の多い日は沃剥(ようポツ)を少々。……どうでしょう。ここで立ち尽くしているのも何でしょうから、廊下を歩きがてら話でも」

情報

注記 〔注:ソマトーゼは滋養強壮剤。沃剥とはヨウ化カリウム(慢性の気管支炎や喘息などに用いられた薬)のことである〕

メイン

エド・ウォーデン 「ああ、失礼……」
促されるまま歩きます。
私の処方する薬と同じ……耐性がついてしまったのかな…。

真崎 敬之 「現在は安定しておりますので、作業療法と、水治療を週に三度。典型的な偏執病、パラノイアでありますから、さして変わったことはしておりません。薬餌にバターを混ぜると心持ち安定するきらいがありますな」

エド・ウォーデン なるほど……バターが好きなんですね…。
「なるほど……いろいろとされているのですね。
 薬を飲んでも頭がぼんやりとするばかりだ、と言っていたのですが、もしやお薬に慣れてしまったのでしょうか……」

真崎 敬之 「ウォーデン先生もご存知の通り、バルビタールには精神を落ち着かせ時には眠らせる効能もありますからな…」

エド・ウォーデン 「ああ、それが”ぼんやりする”と……」
…私は別の薬を処方してたりしたんだろうか…
ううん……それか、真崎先生に投与しているお薬について思うところが無いか心理学?

語り手 承知しました。
SCCB<=70/4 真崎への心理学 (1D100<=17) > 97 > 致命的失敗
彼からは特に何も感じないでしょう。
ウォーデン先生自身の思い当たる限りでは、バルビタール以外の薬を処方した覚えはないでしょう。当時は現代の様な有用な抗不安薬は存在していません。鎮静・抗不安のために睡眠薬を使用するぐらいしか、選択肢はなかったのです。

エド・ウォーデン 了解です。なんでしょう……自惚れるなら何らかのプラシーボ効果が発生していたのだろうか…?

語り手 そしてウォーデン先生。あなたは真崎の心の内を伺い知ろうと彼の顔を覗いたとき、その目に仄暗い欲望、飢餓の色が混じっているように感じました。
1/1d3の正気度喪失。

エド・ウォーデン どうして……。
CCB<=65 【SANチェック】 (1D100<=65) > 9 > スペシャル

system [ エド・ウォーデン ] SAN : 65 → 64

語り手 なぜでしょうね。

真崎 敬之 「いかがされましたかな?」

エド・ウォーデン 「……いえ、真崎先生、もしやあなたは……」

真崎 敬之 「はい」

エド・ウォーデン 「お腹が空いておられるのでは。
 昼食はまだでしたか?」

真崎 敬之 「おっと、見抜かれてしまいましたか。こうして忙しく仕事をしていると、食事も満足にできませんからな」
「加えて、最近は論文の話がありましょう。追い込み時期なのです」

エド・ウォーデン 「成程。私もそうです。
 進んでいないはずはないのですが、やはり気が急いてしまいますね」
「しかし、お時間を作ってお昼を召し上がったほうがよろしいかと。
 今度、お食事にでも……お肉などはどうですか?」
肉……肉に対する執着はあるのか…?

真崎 敬之 「肉ですか、ああ大いに結構ですな。五十の爺にも許されるなら、カフヱーのようなハイカラなところでビフテキなどを食べてみたいものです」

エド・ウォーデン うーん……お肉に対して思うところが無いかどうか心理学をしていただいても…?

語り手 承知いたしました。

エド・ウォーデン 本当にビフテキを食べたいのか…?

語り手 SCCB<=70/4 真崎への心理学 (1D100<=17) > 23 > 失敗
真崎の語る言葉そのものは楽しそうな並びであるものの、彼は眉一つ動かしません。その真意はつかみ取りかねるでしょう。

エド・ウォーデン 承知しました。
少し低かったかな……。
「ええ、そのときはぜひ」

語り手 また、人の心の機微を読み取ることに長けているウォーデン先生であれば、これが自分の心理を読み取らせないよう意図的に行っているものであるとわかって良いでしょう。それほどに真崎医師の表情は乏しく、声に感情が乗っていないのです。

エド・ウォーデン 怖い。私がおかしいのか相手がおかしいのか…。
彼自身を探っても何も出無さそうだし、何なら場合によってはこちらが危ないかもしれないな…。
「お話は戻りますが十三君……彼の今日のお薬の時間はまだだったでしょうか。
 良ければ私が彼に薬を渡しても?」
「渡す人が異なることで……気分が変わるかもしれません」?

真崎 敬之 「ウォーデン先生が? いやしかし……」

語り手 <交渉技能>をどうぞ。

エド・ウォーデン 無い ですね…… ワ 振ってみます
CCB<=15 【信用】 (1D100<=15) > 46 > 失敗

真崎 敬之 「あなたの技量を疑うわけではないのですが、妹尾さんとは久しいでしょうから…やはりここは、私が」

エド・ウォーデン 「そうですか……。
 主治医の意見をないがしろにするわけにはまいりませんね。
 まして、真崎先生のお言葉ですから」
薬を渡したくない、もしくは私に処方されたくない理由があるのかな……うーん…うーん……。
この病院のお薬が見たくなってきた…

真崎 敬之 「いいえ。妹尾さんは大事に思われていますな」

エド・ウォーデン 「そうですね。患者に入れ込むのはよくないことかもしれませんが……
 数年ほど診ていたので、情がうつってしまったのやも知れません」

真崎 敬之 「妹尾さんには、ご両親がもういらっしゃらないと聞きますから…余計に気にかかるのでしょう」

エド・ウォーデン 「そうですね……。
 ……妹尾さんは兄君のことを……その、気になさっていましたが、兄君の方はこちらへはよくいらっしゃるのですか?」

真崎 敬之 「ああ、そのご兄弟なら月に一度様子を見にいらっしゃいますな。その度に患者が興奮しますので、やや困るところではありますが」

エド・ウォーデン 「月に一度……なるほど。今月はもういらしたあとで?」

真崎 敬之 「ええ、つい数日前に」
「ご両親から相続した土地まで売り払って…立派なことです」

エド・ウォーデン 「ああ、たしか……入院資金を然うして工面されたとか」
ううん、それがあって心が揺れて手紙を送ってきたのだろうか。

真崎 敬之 「ええ。当院では欧米にならって、さまざまな設備、体制を充実させようとしておりますからな…金はかかるのです」

エド・ウォーデン 「そうですね……お話を聞いている限りでも随分よい治療を受けられる医院だとおもいます」
「……面会の時は何事か変わった様子はありませんでしたか。
 妹尾くんでも妹尾くんのお兄様でも……」

真崎 敬之 「面会にいらっしゃるのは兄君だけですな…妹尾さんが毎回暴れまして……ウォーデン先生は特段にかわったことはないので?」

エド・ウォーデン 「私…? ああ、いえ……?」
変わったこと……
「うーん…? 随分好意的に迎えてもらったような気がしますね…」

真崎 敬之 「殴りかかられたり…」

エド・ウォーデン 「いえ、そんなことは…」

真崎 敬之 「さようですか……ウォーデン先生にはだいぶ心を開いているようですな。不思議とは思いませんが、それでは兄君が少々不憫というもの」

エド・ウォーデン 「ううん……そうですね、どうにも兄君の方には不信感がある様子で……」
彼が妹尾家に住んでいたころもそうだった…のでしょうか?

語り手 あなたの記憶の限りでは、それほどでもなかったような気がします。あなたが担当医として妹尾邸に訪れていたころ、まだ彼らの両親が存命でありました。十三のことは両親とあなたが看て、兄の文恒は骨接ぎの仕事に励んでいました…という様子だったでしょう。

エド・ウォーデン ううん……了解です。
「以前はそれほどでもなかったのですが。
 そういえば一年ほど前、兄君と喧嘩した、と言っていましたがそれはこちらの医院でのことでしょうか」

真崎 敬之 「喧嘩? いえ、兄君が一方的に耐えておりますが……あれは喧嘩と呼べるのかどうか」
「顔を合わせれば毎度のことですな、妹尾さんの暴行は」
「まだ良いときは枕、酷いときは水差しを投げつけるのです」

エド・ウォーデン 「それは……
 よく耐えていますね……」
「ううん……わかりました。
 兄君にも少しお話が聞けたらいいのですが……」

真崎 敬之 「骨接ぎの仕事がおやすみであれば、自宅にいらっしゃるやもしれませんな」

エド・ウォーデン 「なるほど……ありがとうございます。そちらを伺ってみます」
「ひとまず、妹尾さんにお薬の件については話してみます。
 納得してくれるといいのですが…」

真崎 敬之 「そうですか……熱心ですな」
「──この国はまだまだ発展途上とは言え、今なお祈祷、禁厭、灌瀧が幅を利かせておりますな。田舎では獣の黒焼きなぞを飲ませては、強力を使って患者を滝壺に叩き込んでいると聞き及んでおります。大変に嘆かわしいことで」

情報

注記 〔注:禁厭とは呪いのこと。灌瀧とは、瀧行のように頭部を瀧に打たせる民間療法のこと〕

メイン

エド・ウォーデン 「ええ、その様子で。
 気持ちの上で楽になる場合もあるでしょうが……寛解することも少ないでしょう。
 手段によっては命を落とすことにもつながるでしょうし」

真崎 敬之 「ええ……ウォーデン先生はご存知なくとも仕方がありませんが、かつて相馬事件という、藩主ともあろう方を死なせた惨事があったのですよ。
 未だ精神病者の扱いは、欧米諸国に比ぶべくもないほどに行き届いておりません。今朝も簀巻きにされた患者が表を運ばれているのを見ましたが、まるで、古布団を捨てに行くかの有様でした」

語り手 ぎしり、ぎしりと床板をきしませながら二人は体重を乗せて廊下を歩きます。
明治期に作られた板ガラスは波打っており、そこから差し込む夏の日差しはわずかにうねった影をあなたたちに落とすでしょう。
深刻そうに皺を寄せた真崎の顔の影がくっきりと浮かび上がりました。

真崎 敬之 「して、貴方はこの実情にどのような考えをお持ちですかな」

語り手 ──さて、ここで一度切りましょうか。
再開は13時15分といたしましょう。

エド・ウォーデン はい、わかりました。13時15分ですね……。
宿題を頂いてしまった。真崎先生…

真崎 敬之 期待していますよ、ウォーデン先生。別に私の望む答えでなくとも構わないのです。先生のお考えがあればそれをお聞かせ願いたく。

エド・ウォーデン ううん、つまらぬ答えしか……いえ、がんばります。
それでは、また後ほどよろしくお願いいたします。

語り手 それでは再開といたしましょう。

エド・ウォーデン はい。よろしくお願いいたします。

真崎 敬之 「して、貴方はこの実情にどのような考えをお持ちですかな」

語り手 彼はカイゼル髭を摘み上げ、あなたにそう問うのです。

エド・ウォーデン わたくしには、それほど立派な意見というものはありませんでしたが、ひとまずこのように答えました。
「一刻もはやくより有効的な治療法が見つかれば、と思わずにいられません。
 もとより"完全に治る"というものでは無いような気がするのですが」
「しかし現状においては、ひとびとの意識の改革も矢張り必要なのでしょう。
 先ほどおっしゃられた拷問じみた治療法も、非人道めいた扱いも間違った認識から発生しているものです」
「一般に暮らすひとびとにも、国を動かす立場のひとびとにも、現状の恐ろしさが能く伝わればあるいは。しかし、難しいのでしょうね。
 知っているものがひたすら声を上げ続けるしか……ないのでしょう。歯がゆいですが」

語り手 真崎医師はあなたの言葉を聞くと、一度低く唸りました。

真崎 敬之 「果たして、ウォーデン先生と同じようなお考えを持ってくださる若者が、どれほどいらっしゃるのか…」
「いやしかし、先生の率直なお気持ちを聞けて安心しました。私はすでに五十の爺」
「今、斯様な過渡期にあるこの分野において、次の世代がどちらに舵を切るのか…引退する前に気にかかっていたものですからな」

エド・ウォーデン 「そのようなことをおっしゃらず。
 まだまだお若いですよ」
少なくとも気持ちの上では、そのように思えるが

真崎 敬之 「ははは。そうでしたな、まだカフヱーでビフテキを食べるまでは年寄りぶってはいられませんな」

エド・ウォーデン 「ええ。楽しみにしておりますから」
しかし言っていること、先程の昏い眼の落差が気にかかる……。
「それではわたくしはそろそろ……
 いえ、一つお尋ねしたいことがあるのでした」

真崎 敬之 「なんでしょう」

エド・ウォーデン 「妹尾さんのあの小指、あれはいつからでしょうか。
 以前はあのように短くなってはいなかったと記憶していたのですが」

真崎 敬之 「妹尾さんの小指…ですか? ここに来る前から失せていたかと……」

エド・ウォーデン 「そうですか……。
 真崎先生はあの小指、どう思われますか。
 何かに食いちぎられたように見えますでしょうか」

真崎 敬之 「まるで元からなかったかのようにつるつるとしいますな」
「…生まれつきか、幼い頃に失くしたものなのかと思っておりました」

エド・ウォーデン ん……どうなんだろうか、私が忘れているだけ…?
以前も小指はなかったのでしょうか。だとしたら、指がないことに気づく、ということは無さそうですが。

語り手 いいえ、あなたが診ていた頃は指がちゃあんと5本揃っていたように記憶しています。
うっかり見落とす、などということはないでしょう。

エド・ウォーデン そうですよね。わかりました。
「いえ、確かに五本指が揃っていたのですが……。
 わかりました。ありがとうございます」

真崎 敬之 「これから兄君にお会いに行かれますか? 私からもよろしくお伝えください・弟君は元気ですと」

エド・ウォーデン 「そのつもりです。ええ……よく伝えておきます」
真崎先生に別れを告げて、病室に戻る……だろう。
お薬はやはり、あげられないことを伝えると悲しむだろうな…

語り手 ウォーデン先生と真崎医師はその場で軽く会釈して別れるでしょう…別れ際に<聞き耳>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=51 【聞き耳】 (1D100<=51) > 82 > 失敗
出目…ふう。

語り手 ぬるりとした風があなたの頬を撫でます。病室では十三が唸りながらうずくまっているでしょう。

エド・ウォーデン うん……今日も暑いな。
「十三君。只今、戻りましたよ」

妹尾 十三 「センセ、センセ……前の、薬を……」

エド・ウォーデン 「ん……うん、思い出したのですが、今日はお薬の箱を忘れてきてしまったのでした。
 しかし、お家で出るお薬も、わたくしが十三君にお渡ししていたものと全く同じなのですよ」

妹尾 十三 「そんなはずはありません、あの下男はよく分からないものを寄こしてくるのです」

エド・ウォーデン 「よく分からないもの?」

語り手 十三は髪を乱しながら、あなたにすがります。

妹尾 十三 「あれは食事に人肉を混ぜてくるのです。なんてことはない、彼らにとってはそれが普通の食事でありますから」

エド・ウォーデン 「わ…… ……人肉……」
バターと言っていたが……ううん、薬餌に…?

妹尾 十三 「薬だといって、毒を飲ませてくるのです。そのせいで僕は、僕は…頭を溶かされ……」
「こんなにも、頭が痛い…痛い……」

エド・ウォーデン 「真崎先生は……」
信頼できるお医者様かどうかは現時点ではなんとも言えないが……
十三君にひとかけらの安心を与えるべきなのか…?

語り手 お好きなようになさってください。このまま立ち去って、妹尾邸に行っても、どこへ行っても構いません。

エド・ウォーデン はい……。

語り手 時間はまだございますからね。

エド・ウォーデン 「十三君、君に毒を飲ませても真崎先生はきっと何を得することもありません。
 それよりもごはんを無理のないようにいっぱい食べてください。
 君はすこしやせすぎですよ」

妹尾 十三 「あいつの作った食事など…!」

エド・ウォーデン 「真崎先生が持ってこられるかも知れませんが、実際に作っているのは別の方でしょう。
 その方にもきっと、君をどうこうしてよいことがあるはずがありません」

妹尾 十三 「センセ、あれは下男ですよ。どうしてセンセがあれを先生などと……」

エド・ウォーデン 「ああ……そうでしたね。真崎…さん。
 真崎さんとお呼びすることにしましょう」
死んでしまったら、お金が入らなくなるだろうし…。とは言わないが。
「さて……それではまた席を外します。
 今度は本を持ってきますね」帰る、というと悲しくなってしまいそうだ。

妹尾 十三 「センセ……」
「また、明日もいらっしゃいます…よね…?」

エド・ウォーデン 明日……明日の予定はどうだったか。
シナリオ的に現状明日、どうしてもこられないということがありますか?

語り手 いいえ、明日は休日なので自由に行動できるでしょう。

エド・ウォーデン 了解です。必ず顔を出すというのは難しいが……
「ええ、可能な限り来られるようにします」

妹尾 十三 「どうか…どうかご無事で。センセ」
「でないと……」

語り手 そう言うと十三はわけのわからぬ言葉を口の中で小さくつぶやきながら、再びベッドの上で身体を丸めるのでした。

エド・ウォーデン なるほど……。背中を軽く撫でるように触れて、病室をあとにしましょう。
「ではまた。十三君」
向かうは妹尾家ですね。

語り手 承知いたしました。
《妹尾邸》
平屋の大きな家です。両親祖父母も既に鬼籍に入り、現在は兄の文恒だけが暮らしています。
探索者が十三を看ていた頃は主に両親とやり取りを交わしていたため、文恒と直接話したことは殆どありませんでしたが、お互い顔は見知っているでしょう。
玄関脇に呼び鈴が付いています。

エド・ウォーデン 流石に少し緊張するか……。
玄関をじいっと見たあと、呼び鈴を鳴らしてみましょう。
「ごめんください」

語り手 ちりん、と鳴らすと扉の向こうから衣擦れが聞こえます。

妹尾 文恒 「ああ、これはセンセイ。お久しぶりでございます」

エド・ウォーデン 「はい。エドヴァルド・ウォーデンがまいりました。
 お久しぶりですね。一年ほどですか」

妹尾 文恒 「ええ……本日はどういったご用件で」

エド・ウォーデン 「実は弟君の十三さんからお手紙を頂きまして。
 病院に寄った帰りに伺った次第です」

語り手 十三の兄、文恒(ふみひさ)はすこし驚いたような顔をすることでしょう。

妹尾 文恒 「ああ――弟から手紙が届いたのですか。あすこの脳病院は、そんなことを許してくれたのか。何ぞ妙なことを口走って、ご迷惑を掛けたりはしませんでしたでしょうか」
「あれから一年も経つのに、いまだ弟を気にかけてくだすって、本当にありがたく存じます。ああ、こんな日の照った場所にいてはいけません、お茶を出しますので、ぜひ中へ。さあ」

エド・ウォーデン 「え……ああ、有難うございます。
 ですがお構いなく……」
といいつつ、入っていく。お話を聞きたいこともあるし。

雑談

藺草 今の所好きな人物しか出てこないな……(真崎先生に訝しげな目を向けつつ)

メイン

語り手 文恒は探索者を居間へ通し、茶を出してから腰を下ろします。

妹尾 文恒 「それで、弟がなにか――?」

エド・ウォーデン 「ああ、ありがとうございます」
お茶を飲みつつ
「先程申し上げたとおり、お手紙を頂きまして。
 十三君に会いに病院まで行ってまいりました。ちょうど時間も有りましたから」
「お手紙では随分と憔悴した様子に見受けられ随分心配したのですが……思ったよりは元気そうで安心しました。
 しかし妙なことをおっしゃっていて……」

妹尾 文恒 「元気そうですか…して、妙なことというのは」

エド・ウォーデン 「……ええ。
 妹尾さんは、人肉食について如何ほどご存知でしょうか」

語り手 文恒は途端に鼻白みます。

妹尾 文恒 「なんですか突然……そのような、気狂いじみたことを……」
「己が知るはずもありません」
「それでなくとも、己は、弟の奇行で肩身の狭い思いをしているんです! 身内が警察に引っ張って行かれるなど、そのようなことはもう、もう……!」

エド・ウォーデン ううん…… 本当に呆れと怒り以外の感情が混じっているのかどうか
一応心理学……? 弟の妄言だと思ってそうではありますが

語り手 承知いたしました。
SCCB<=70 心理学 (1D100<=70) > 42 > 成功
文恒はひどく気分を害したようです。この話題に関して以降触れようとしないでしょう。顔を伏せってしまいます。

エド・ウォーデン 申し訳ないことをした……。
「すみません。唐突に話題に入りすぎてしまいましたね……。
 ええ、つまり……突拍子もないような考えに脳が囚われてしまった、ということです」

妹尾 文恒 「弟が…さようでありましたか…」

エド・ウォーデン 「はい……。彼は貴方の本棚の……本草なにがし――正確な名前を失念してしまいましたが――という本を読んでそのように思った、というのですが心当たりなどはありませんでしょうか」

妹尾 文恒 「本草…もしや本草綱目のことでは」
「確かに己はそのような本を持っています」

エド・ウォーデン 「なるほど。どのような本であるのでしょうか。
 もし……可能であれば見せていただいても?」

妹尾 文恒 「ええ、もちろん。少々お待ちを」

語り手 文恒はそういうと、腕を伸ばす準備運動をしながら居間を出ました。

エド・ウォーデン お茶を飲んだり居間をぼんやり眺めたりするでしょうか。
一年前とは様相が違っていたり…? そんなことはないか。

語り手 さて、文恒のいなくなった居間を見渡せば、一人で暮らすには広すぎる家だと感じることでしょう。隅々まで細やかな手入れが施されており、丁寧な暮らしが感じ取れます。一年前と変わらぬ風景です。
目の前の湯飲みには氷で冷やされた緑茶が淹れられています。この爽やかな風味は静岡茶でしょうか。
そのようにあなたが待っていると、文恒が重たそうに本を三冊運んできます。全て合わせると五貫(18.75kg)ほどはあるかも知れませんね。あちらこちらに持ち運ぶのは現実的ではないと思うでしょう。

妹尾 文恒 「よい…しょ」

語り手 ポマードで整えられた前髪がひと房、文恒の汗ばむ額に張り付きます。

エド・ウォーデン 「ああ……そのように重たそうなものを持ち運んでいただいて……」
立ち上がって……でも何もできなさそうだ。

妹尾 文恒 「ああ、いえ、お構いなくそのままお座りください」

語り手 そのまま文恒は、ウォーデン先生の横に『本草綱目』を置くでしょう。

妹尾 文恒 「数年前に『補注本草綱目』の名前で和刻本が出版されましてね」

エド・ウォーデン 「はあ……いや、ずいぶんと、これは……」

妹尾 文恒 「センセイは本草学をご存知ですか。古代中国の薬学と博物学に端を発する学問でして、薬効のある動植物や鉱物の研究、不老不死の仙人となるための霊薬を生成する錬丹術などに関係が深いのですよ」
「この補注本草綱目は和刻本ですが、もとの本草綱目は明の時代に出版された本草学の大著なんです」

エド・ウォーデン 「いえ、失礼ながら中国の方の医学には疎く……
 しかし興味深いですね。それほど前から……」
「開いてみてみても?」

妹尾 文恒 「ええ、どうぞ。お好きなように…失礼、茶を一杯」

語り手 文恒はごくごくと茶を飲み干します。
さて、今あなたの目の前にある五貫もの重さの本。それら全てに目を通すのであれば、斜めに読んでも三日は掛かるでしょう。
<図書館>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=60 【図書館】 (1D100<=60) > 92 > 失敗

語り手 これまで東方医学に触れる機会の少なかったあなたですから、読もうとして少しめまいが起きてしまうかもしれませんね。

エド・ウォーデン そうかもしれません。
うん……人肉食についての頁を探そうにも、どういう言葉で引けばいいのか見当が。

語り手 では<目星>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=45 【目星】 (1D100<=45) > 12 > 成功

雑談

エド・ウォーデン どうして…

メイン

語り手 おや…では、あなたはぺらぺらとすべてのページを開いてみて、一つ引っかかる箇所を見つけるでしょう。落丁のようにそこだけわずかな隙間があったのです。
『本草綱目』の最終、第五十二巻。そこには、『人体の薬物利用』について書かれていました。

エド・ウォーデン 「……?」
ここは……ううん……何故……

語り手 けれど一頁だけ綺麗に破り取られているのです。〈アイデア:1/2〉〈医学〉〈薬学〉をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=75 【医学】 (1D100<=75) > 86 > 失敗

雑談

藺草 どうして どうして

語り手 他の技能も試されますか?

エド・ウォーデン ためします……振りに参りますね。

メイン

エド・ウォーデン CCB<=61 【薬学】 (1D100<=61) > 2 > 決定的成功/スペシャル

雑談

エド・ウォーデン どうして…? 翻弄されている

メイン

語り手 おや、これは大変素晴らしい。クリティカルチケットをどうぞ。

エド・ウォーデン ありがとうございます。

system [ エド・ウォーデン ] チケット : 0 → 1

語り手 人体の歯垢や爪、内臓などを使う薬の説明は一通りあります。
さて一体何を最後に書いてあったのか。
ウォーデン先生。あなたはどこかでこの薬の名を聞いたのかもしれません。『人魄』の頁が無いのだと気づきます。

エド・ウォーデン 人魄……鎮心…?

語り手 魂魄…という言葉はご存知ですか? そのうちの魄は肉体を支える気を指したのです。それを処方することで、精神を鎮めることができたと信じられていたようですね。

エド・ウォーデン なるほど、魂のような活力のような、その辺りの話でしょうか。
ううん…
とは言っても目には見えないもの。
少なくとも今の私では処方できないものでしょう……それに誰かが興味を持って、この頁をもっていった…?
「妹尾さん、少々よろしいですか。この最終巻……
 いささか落丁があるように見受けられるのですが」
「こちらは以前から…?」

妹尾 文恒 「おや、それは気づきませんでした。買ったときから、失せていたのかも知れません」

エド・ウォーデン 「これほど大量の本の総ての頁を確認するのも難しいですからね。
 無理も有りません……。どうやら人魄の頁のようなのです」

妹尾 文恒 「『人魄』? センセイはそれが何かご存知なので」

エド・ウォーデン 受け売りになるが……
「魂魄、というものがあるでしょう。魄は、肉体を支える気をさすようですね。
 これを薬にできれば、精神を鎮めたり、安定させたりという効果がある、とのことですが……」

妹尾 文恒 「そんなものが…」

エド・ウォーデン 「昔は実際にそのようなことができたのか……
 あるいは、それに代わるなにかがあったのかも知れませんね」
さて、この最終巻に載っているこの場所が……
十三君が目にした人肉食についての興味深い頁なのだとは思いますが、さくっと読んでみて不審なところなどはないでしょうか。
緑色の目とは一体……などと考えつつ

語り手 もちろん、その本草綱目には人肉を生薬として処方する記述もあります。人肉に限らず、さまざまな部位を生薬とする考えですね。しかし緑色の目については何も分からないでしょう。

エド・ウォーデン 何か他の本でも読んだか、あるいは病院で見るなどしたのかな……。
了解です。
そうか、緑の目は兄君か。
後でじいっと見るとして。
「そういえば……十三君の小指についてなにかご存知ではないですか?
 会いに行った時、小指の先が失せていたのですが」
「真崎先生にお尋ねしてみたところ、病院に来たときにはすでに……と。
 わたくしがこちらへ来ることが無くなって以降、何かございましたか」

妹尾 文恒 「弟の小指は――そうか、センセイはご存知ありませんよね」
「あれが今の脳病院に入る少し前、屋外で運動をさせている時、突然垣根を飛び越えて、行方をくらましたことがありました。すぐに警察に届けて、あちこちを捜しまわりましたが甲斐もなく――半月ばかり経ったある日、開け放した十三の部屋でうずくまっているところを見つけました」
「すると、どうしたことか、そのときには小指が失せていたのです。しかしまぁなんと言うか、実にこれが不思議なことなのですがね、出奔する日の朝までは確かに指はちゃんと付いていたように思うのですが、指が失せて帰ってきたとき、弟の手には血の一筋も垂れていやしないばかりか、継いだ痕すらなかったのです。まるで数年前の古傷か、もともと付いてさえいなかったのかというふうに」

エド・ウォーデン 「そんなことが……
 全く知りませんでした。たしかにあの指は……つい最近なくなってしまった、という様子ではなかった」
「しかし半月も、どこでどうしていたのでしょう。
 ご飯は食べていたのでしょうが……」

妹尾 文恒 「さあ…己には何も話してもらえず」

エド・ウォーデン 「……一年ほど前、貴方と喧嘩なさったのだと言っていました。
 小指の先はあなたに食いちぎられたのだと」

妹尾 文恒 「まさか…! そのようなこと」

エド・ウォーデン 「ええ、にわかには信じがたい話です……
 しかし、そのように記憶しているようなのです」

妹尾 文恒 「…弟には己がわからないのでしょうか。見舞いに行っても怒鳴られるばかりで」

エド・ウォーデン 「よく物を投げられるそうですね、枕や……悪いときは水差しなんかを。
 それでもよく耐えておられるとのことで。おつらいですね……」

妹尾 文恒 「己にはもう親がいません。弟しか、家族がおらんのです」

エド・ウォーデン 「わからない、ということも、あるいはあるのかも知れません。
 なにか思い違いをしている可能性も。ああ……」
「なんとか落ち着かれるとよいのですが。如何ともしがたく」

妹尾 文恒 「さようですか…」

エド・ウォーデン 「申し訳ございません。
 ですが、池田医院の……真崎先生も、よく考えていただけているはずなので。
 会われたこともあるかと存じますが」

妹尾 文恒 「ああ、真崎先生。ええ、存じております」

エド・ウォーデン 「弟君の……十三君の件でよろしく、と言っていました」
うーん……妹尾さんは真崎先生に対してどういう印象を抱いているんだろうな……

妹尾 文恒 「さようですか。毎度、暴れる弟をなだめてくださってます…まあ、あれだけ動けるのであれば元気ということなのでしょうね」

語り手 文恒は少し寂し気に肩を落としました。

エド・ウォーデン かなしい
「……ええ」
いつか仲良く話している姿が見られればいいが……
難しいだろうな…
「……そういえば、戸棚やキャビネット、といった家具はどちらに有りましたか。
 良ければ拝見したいのですが……」
「十三君が、やれあれの上にあるあれが、それが、と口にされていて
 少々気にかかったもので」

妹尾 文恒 「はて…? 十三の部屋にございますが…」
「忘れ物でしょうか」

エド・ウォーデン 「そうかもしれません。
 もしなんでも(危険の)ないものだったら、届けに行こうかと考えておりまして」

妹尾 文恒 「さようでしたか。久しく掃除をしていなかったので、一度十三の部屋を改めてからでもようございましょうか」

エド・ウォーデン ううん…? 心理学?
ないとは思いますが、何か隠したいものがあったり…?

語り手 SCCB<=70 心理学 (1D100<=70) > 54 > 成功
この文恒という男、あなたに何か隠し事をしている様子ですね。今しがた、あなたから目をそらして伏せました。

エド・ウォーデン どうして……いや、何でも詳らかに話されても困るのですが。
「うん…? いえ、お気になさらず。
 部屋主がいないのにそう長くいるつもりもないので……さっとみてさっともどりますよ」
でも強くはいえないな……固辞されたらそのまま入るのは諦めよう。

妹尾 文恒 「………さようですか。では、こちらへ。案内いたします」

エド・ウォーデン いいんだ……。
「はい。ありがとうございます」

語り手 ≪十三の部屋≫
あなたは文恒の案内で、十三の部屋を訪れます。
廊下側の壁は取り払われ、代わりに格子が嵌っていました。窓には鉄棒が縦横に差し込まれ、今は外から雨戸が立てられており、ひどく暗い様子。
素人目であろうと、ここが私室を監置用に改造したものだと分かるはずです。私宅監置の実際は、殆どが牢獄よりなお惨憺とした環境である中、この清潔な部屋を監置室とされていた十三は破格に恵まれていたと言えるでしょう。
十三の部屋は綺麗に片付いており、大きなベッドと楢材のキャビネットがあるのみです。

妹尾 文恒 「こちらです、センセイ」

語り手 文恒も部屋についてきてウォーデン先生の挙動を見守っているようです。

エド・ウォーデン 「ええ。失礼します」
み、見てる……

語り手 ええ。じぃ、と見ております。

エド・ウォーデン なんだろう……戸棚の裏の方から見てみようか。
戸棚はありますか?

語り手 ここに戸棚はなく、代わりにキャビネットがあります。
さて、あなたが部屋に入ると文恒が口を開きました。

妹尾 文恒 「センセイ――センセイから見て、弟の様子はどうでしたか。あれは生涯、あのまま元には戻らないと思いますか」
「センセイもご存知の通り、あれは生来頭の利発な子供だったのです」
「柳川師範学校を出るまでは、それはもう勉強熱心な奴でした。たんと本を読み、将来は帝都で教授をやるのだと息巻いていました」
「それが今ではあの有様で――己はそれが悲しくてなりません」

語り手 <聞き耳>もどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=51 【聞き耳】 (1D100<=51) > 81 > 失敗

語り手 閉め切られた部屋のなかで、じとりと夏の湿り気があなたを包みます。

エド・ウォーデン 了解です。
「……妹尾さんが覚えている十三君のように、完全に”戻る”ということは難しいでしょう。
 精神の病とは根深く、根治はかなり難しいものです」
「それでも根気強く接していくことで寛解する可能性が考えられます。
 また、そのような状態であっても何かを学ぶということも可能でしょう」

妹尾 文恒 「そう…ですか……さようですか……まだ、可能だと……」

エド・ウォーデン 「わたくしの考え方は……少々楽観的かも知れませんが。
 しかし希望を持たずに前に進むことは難しい。良くなることを願っております」
「妹尾さんもおつらいでしょう。広い家で……寂しくて、苦しいでしょうね。
 よく耐えておられると思います。……一時の関わりしかない医者が何をと思われるやもですが」

妹尾 文恒 「いいえ…こうしてお話できるだけでも、十分です」
「お手を止めてしまいましたね。どうぞ、おかまいなく」

語り手 キャビネットには十三のものらしき古い歯型が幾つかついていました。引き出しは完全な取り外しができないように改造されたもので、キャビネット自体も壁にしっかりと固定されています。

エド・ウォーデン 「いえ……」
あれ……戸棚(キャビネット…?)の裏、見えない……歯型……

語り手 裏側…そうですね。
引き出しよりもそちらが先に気になるのであれば、先に<目星>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=45 【目星】 (1D100<=45) > 91 > 失敗

語り手 引き出しの方が気になってしまったようですね。

エド・ウォーデン 了解です。
だめだ……おとなしく引き出しを開けてまいりましょう。

語り手 引き出しは上段下段の二つがございます。

エド・ウォーデン 上から順番に見ていきたいです。

語り手 キャビネットの上の引き出しを開けると、ひしゃげたスプーンや短い麻紐などのガラクタにまじり、小さな骨片を発見できるでしょう。
骨を調べるのであれば、〈医学〉または〈生物学〉をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=75 【医学】 (1D100<=75) > 17 > 成功

語り手 素晴らしい。流石はウォーデン家の方ですね。

エド・ウォーデン とても久しぶりに成功しました。有難うございます…。

語り手 やや角が取れてそれと分かりにくいですが、人間の指先の骨――末節骨であることが分かるでしょう。
0/1の正気度喪失。

エド・ウォーデン CCB<=64 【SANチェック】 (1D100<=64) > 46 > 成功

語り手 あなたは文恒の見ている前で、動揺を顔に表すことはありませんでした。

エド・ウォーデン 「………」これは……
手にとってコロコロと転がして……
更に他のガラクタをダミーに手に取る……?
「スプーン…に、紐……小石……」

語り手 ……その骨をどうされますか?

エド・ウォーデン ガラクタごと持っていくことは可能でしょうか。

語り手 文恒の目を盗みそれを手に入れるのであれば、〈隠す〉をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=75 【隠す】 (1D100<=75) > 84 > 失敗

雑談

藺草 90以下の技能をいくら取っていても関係ないのだ…

メイン

語り手 ではウォーデン先生。あなたの手癖が、文恒の目に入るでしょう。

妹尾 文恒 「……センセイ、一体何を?」

エド・ウォーデン 「……ええ、十三君にこの引き出しの中身のことを言及されたものですから。
 持っていこうかと思ったのですが」
「不都合でしたでしょうか」

妹尾 文恒 「そのガラクタが弟の…忘れ物? でしょうか」

エド・ウォーデン 「はい、お気に入りのスプーンに、煌めく硬貨、ましろい小石を見せたいのだと言っておいででした」
「ほかにも茶葉を探していたかな…」

妹尾 文恒 「なんと……そうでしたか。あれはまた何かおかしな思い込みをして……お付き合いさせてしまって申し訳ありません、センセイ」
「それでいったい何の不都合などございましょうか。ぜひ、あれに見せてやってください」

エド・ウォーデン 「いえ。こうして同じ場所に置いてありましたから。
 記憶力は抜群でございましょう」
「では少々お借りします」
ハンカチか何かに包んで持っていきましょう。

語り手 あなたは見咎められることなく、そのガラクタと骨を手に入れることでしょう。

エド・ウォーデン ありがとうございます。
……下の段の引き出しも、覗いてみたいのですが。

語り手 あなたが下の段の引き出しを開けると、中には日記がありました。ぺらぺらと開いてみれば、ページが5枚ほど千切り取られています。

エド・ウォーデン 千切り取られて……?
ぺらぺらしてるのに見咎められないということは読んでも良さそうだ。
読んでみます。

語り手 支離滅裂な言動と、精神不安を訴える内容がほとんどを占めておりましたが、残されたページの最後の言葉は──

妹尾 十三 『アニキには言えない。センセに話さなくちゃ。』

語り手 あなたがそれを見ていると、耳元に文恒の吐息が掛かりました。

妹尾 文恒 「弟の日記です。一体なにを言っているんでしょうか、あれは」

エド・ウォーデン 「え…… ――」

語り手 ふとキャビネットの辺りを見ると、キャビネットと壁との隙間に紙片が覗いていることに気づきます。それは罫線の幅から、千切り取られた日記の一頁であることは明らかでした。
あなたのすぐ後ろでは、文恒があなたの肩越しに日記を覗き見ています。

エド・ウォーデン 「そう、ですね……なにか不安なことがあったのかも……」
しかし今は文恒さんの目がある… ええ……

語り手 〈隠す〉に成功すると、文恒に気づかれずにそれを隠し持つ、或いは盗み読むことができるでしょう。

エド・ウォーデン チケットをちらりと見る。
……挑戦してみましょう。
CCB<=75 【隠す】 (1D100<=75) > 71 > 成功

語り手 お見事。あなたは腕までまくった袖を緩やかに手首まで伸ばして、その紙きれを手で覆うと
くるり、と手のひらの中に音も立てずおさめ、袖口の中へと放り込みます。

エド・ウォーデン 奇術師……。なんでもないようにお話を続けましょう。
「文恒さんにもこちらのお話は覚えがございませんか」

妹尾 文恒 「…………──」
「いえ、なにも」

エド・ウォーデン あるんだろうな。
「そうですか……」
そうだな……これ以外に妹尾さんが”隠していること”について
気にかけている場所がないかどうか心理学をお願いできますか?
もし申し出のときにそのままで大丈夫ですよ、と言わなかったらどこをどう改めるつもりだったんだろうか……。

語り手 承知いたしました。
SCCB<=70 心理学 (1D100<=70) > 38 > 成功
一瞬、文恒の視線がベッドへ向いたことに気が付きます。

エド・ウォーデン わかりました。
「それにしても懐かしいですね。
 よくベッドに座っている十三君とお話させていただいたものですが」
ふらふらベッドに近づいてみましょうか。
袖は誤って中のものを落とさないようにボタンをきっちり締めるとして。

語り手 ベッドを調べるのであれば、<目星>をどうぞ。先ほど文恒がどちらを見たか、だいたいのあたりが付いているので心理学の半分…+35を補正として付けていただいて構いません。

エド・ウォーデン ありがとうございます……。振ってみます。
CCB<=45+35 【目星】 (1D100<=80) > 76 > 成功
補正で生きている。

語り手 なるほど…では。
あなたがベッドに近づくと、薬包紙に包まれた炭のような粉が、ベッドのマットレスの隙間に押し込まれていることに気づくでしょう。

エド・ウォーデン 「………」
気にしてほしくないなら気にしてないような素振りでソレを手に取りましょう。
これはなんだろう。

語り手 あなたの処方したことのない薬であることは確かでしょう。

エド・ウォーデン どうしてこんなものがここに。
えっ、文恒さん? じゃないだろうし…いや文恒さんなのか…?
「これは……薬?」

妹尾 文恒 「はて…なんでしょうか」
「己も知らぬものですね」

エド・ウォーデン 覚えがある気がする。心理学をお願いしたいです。

語り手 承知いたしました。
SCCB<=70 心理学 (1D100<=70) > 40 > 成功
ええ、あなたの御推察通りです。彼はとぼけたふりをして「知らぬ」などと嘘をついていることが分かるでしょう。

エド・ウォーデン 「……誰に処方されたものでしょう。
 十三君があなたに隠れてこのようなものを持つことは難しいでしょうに」
「わたくしの後、池田医院に移る前にどなたかに掛かったのでしょうか?」

妹尾 文恒 「……いいえ、そのようなことはありませんでした」

エド・ウォーデン うーーん、心理学を
嘘発見器みたいな挙動になってきたような気がいたしますが。無意味、不要であればソレはソレで大丈夫です。

語り手 承知いたしました。
SCCB<=70 心理学 (1D100<=70) > 76 > 失敗
文恒の声がだんだんと平坦で冷ややかなものになっていきます。あなたには今の言葉の真意がわかりかねるでしょう。

妹尾 文恒 「……その薬が、何か?」
「何か、拙いのですか?」

エド・ウォーデン 「……わかりました。
 見慣れぬもので。わたくしが処方したものではありません」
たしか見ただけではなんの薬かわからなさそうな感じですよね…?

語り手 開いてみてよく調べるのであれば、<薬学>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=61 【薬学】 (1D100<=61) > 34 > 成功

語り手 素晴らしい…開いてみて、あなたは気づいたのかもしれません。
これは植物や魚といったそれではない…生き物、それも哺乳類の何かを使った生薬であると気付くでしょう。

エド・ウォーデン 十三君自身かな? ……了解です。
「動物の何かを使った生薬でしょう。
 どのような効能があるのか知れませんが……」

妹尾 文恒 「…………」

エド・ウォーデン 「これについてはわたくしの方で少々調べてみましょう。
 十三君の身になにか障りがあるものやも知れません……お預かりしてもよろしいですね」

妹尾 文恒 「いえ……それは……」

語り手 文恒はためらったように首を振ります。

エド・ウォーデン 「……? 何故です……何か気にかかることが?」

妹尾 文恒 「……いえ、どうぞ……お持ちになってください……」

語り手 あなたの問い質しを恐れたのか、渋々と言った様子で文恒は引き下がりました。

エド・ウォーデン 何を隠しているのだろうか……。しかし問い詰めて”やはり”と気が変わっても面倒だし。
「ええ、なにか分かればすぐに知らせます」
お部屋の中はこのような感じでしょうか。
最後にざっと見回しますが。

語り手 ええ、十三の部屋は以上となります。
最後まで文恒はあなたの挙動を見守っていたことでしょう。

エド・ウォーデン なにか見つけてほしくないものがあるのか、私が心底怪しまれているのか、どちらだろうな……。
視線をじっと見つめ返したりしつつ(緑の目…?)、部屋を出るでしょう。

語り手 目を、見ますか。よろしいでしょう。
SCCB<=70 心理学 (1D100<=70) > 60 > 成功
あなたは文恒の目の奥に微かな狂気の残滓を認めることとなります。
0/1の正気度喪失。

エド・ウォーデン CCB<=64 【SANチェック】 (1D100<=64) > 95 > 失敗

system [ エド・ウォーデン ] SAN : 64 → 63

エド・ウォーデン 「……あ」
瞳をじぃっと見つめていて、それに気づいたときに思わず声を漏らしてしまうでしょう。

妹尾 文恒 「──────なにか。」

エド・ウォーデン 「……… ……そうか、文恒さんもお疲れですよね。
 長居をしてしまいました」

語り手 部屋を出る際に、<聞き耳>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=51 【聞き耳】 (1D100<=51) > 86 > 失敗

語り手 夕方の匂いがします。少し冷え、まとわりつくような湿気を衣服から感じるでしょう。

妹尾 文恒 「──藁にも縋る思いなのだと、きっとお分かりいただけるでしょうね」

語り手 文恒はうつむきながら、そうぽつりと言葉を零しました。

エド・ウォーデン 「え……?」
「やはりなにか気がかりが……?
 お力に慣れることはそう多くないでしょうが、不安なことがあればお話を聞くぐらいのことはできます」

語り手 文恒は首を振ります。

妹尾 文恒 「日が沈んでまいりました。このあたりは夜になると野犬がでます。あれに襲われてはひとたまりもないでしょう。さあさ、おはやく。暗くなる前にお帰りください」

エド・ウォーデン 「わかりました。野犬ですか……物騒ですね」
「そのうち、また参ります。
 本日は色々とご対応いただき、ありがとうございました」
荷物を持って、妹尾邸をでる……でしょうか。
帰りに犬に襲われそうだな。回避はないというのに。

語り手 ええ、可能です。あなたは薄暗い道のなか、十分に人通りの多い道を選んで帰路につくことでしょう。
《自宅》
さて。自宅に帰ってあなたは自分の荷物を整理するでしょう。
ガラクタ(スプーン)と骨、紙きれがございます。

エド・ウォーデン そうですね……日記をちぎり取ったものと思しき紙切れに目を通してみましょう。

語り手 あなたが紙を広げると、次の通り書かれていました。

妹尾 十三 『私の日記の大事な部分は、安全な場所に隠してしまいました。なぜこんな事をするのかとお思いでしょうが、これをしなくてはならないのです。今となっては、真実をひとつところに置いておくほど、危険なことなどないのです。』

資料

妹尾 十三 《十三の日記、一》
アニキには言へない。センセに話さなくちや。
《十三の日記、二》
私の日記の大事な部分は、安全な場所に隱してしまひました。何故こんなことをするのかとお思ひでせうが、此れをしなくてはならないのです。今となつては、眞實をひとつところに置いておくほど、危險なことなどないのです。

メイン

語り手 あなたは日記にある『安全な場所』とやらの見当がつきません。知りたければ明日、妹尾十三を訪ねるほかないでしょう。

エド・ウォーデン なるほど……家の中……は安全ではないだろうな。
よかった、明日も病院を訪ねられますね。
では次に……骨を見てみましょうか。
骨である。という以上のことは無さそうですか?

語り手 ええ、さきほどの<医学>で出た情報以上のことは分からないでしょう。誰のものかはわからないが、人間の骨だと思います。

エド・ウォーデン わかりました。十三君のもの、のような気はしますが……。
スプーンはまあ……特になにもないでしょうね…

語り手 あとは、薬包紙もお持ち帰りになられましたね。

エド・ウォーデン はい。あれは……どうでしょう。
私の個人の力であれ以上わかることがあるでしょうか。

語り手 本草綱目を持っていそうな個人的な知人にお心当たりは?

エド・ウォーデン うーーーん、父親はおそらく医者ではない。
父親経由の別の医者がいるかも知れません。
その人にあたって、人魄の項目他、今日目にしたあたりの頁をあらためて見せてもらいましょうか。
手土産を持っていって、食べさせたあたりで話を持ちかけることにします……。

語り手 であれば、見せてもらった本草綱目の人魄の項目で、次の通りの記述を見つけるでしょう。
「縊死した人の下には麩炭の如き物があり、すぐに掘らなければ深く潜っていく。これを除かなければ、必ずまた同じ場所で縊死者が出るだろう。これは人の魄であり、魄は地面に入って物となる。」
「麩炭」……これはあなたがベッドのマットレスから見つけた、炭の様な粉に似ているかもしれませんね。

エド・ウォーデン 縊死……? そういえばご両親は、如何して……いや、病死でしたね。
ではこれは一体……だれの……

語り手 誰の遺体から、誰が作ったものなのでしょうね。

エド・ウォーデン 誰かが殺して、誰かのために作った……?
文恒さんのあの態度から察するに、やはりこの薬には覚えがあるようだ。
しかし……いやまさか。
患者を…いや、だれかを……あるいはご両親を?
そんなはずはないだろう…… ではどこから。自分自身からは取れないだろうし……
あのお屋敷の近くで、最近…いや、一年前頃に妙なことが起きていないか明日、調べてみようかな……

語り手 明日はやらねばならないことがたくさんございますね。

エド・ウォーデン そうですね。論文もあるのに……

語り手 ここで一時中断とし、18:45から再開いたしましょう。
再開しましたら、明日に向けての準備として持ち物等を申請いただきましょうか。

エド・ウォーデン 承知しました。まとめておきましょう。

語り手 ええ。十三くんに本をお渡しするのでしたよね?

エド・ウォーデン そうでした……良い本があればいいのですが。
それではまた、18:45頃にまいります。
ありがとうございました。

雑談

語り手 お戻りになられていますでしょうか。

エド・ウォーデン はい。おりますよ。
少々持ち物をまとめておりました。

語り手 それでは、まいりましょうか。

メイン

語り手 再開いたしましょう。

エド・ウォーデン はい、夜もよろしくお願いいたします。

語り手 一日目の夜。明日のために荷物をまとめていることでしょう。家にいるうちに行いたいことや、荷物の申請をどうぞ。

エド・ウォーデン 持ち物(普段のものに加えて):
 いい感じの本(小説本がよい)、薬包紙、骨、日記の切れ端
 なにか軽く食べられる甘いもの(飴玉など)、資料本、原稿用紙
明日に向けてすること……
うーん、一年前の新聞紙などは……なさそうです。
流石にこれは明日、図書館か警察かで調べるほかないでしょう……。
可能な限り論文を書いたあとは眠ることにいたします。

語り手 承知いたしました。
──それでは、あなたは布団に入るとやがて眠りにつき。
──二日目。
蝉はまだ起きていないようです。静かな朝を迎えられるでしょう。
本日、まずはどちらへ向かわれますか?

エド・ウォーデン まずは……朝早いでしょうから、図書館に向かいたいです。
十三君の病院にはお昼ごろ向かいましょう。昼食に立ち会えるかも知れません。

語り手 承知いたしました。一年前の新聞を調べるのでしたね。
<図書館>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=60 【図書館】 (1D100<=60) > 5 > 決定的成功/スペシャル

語り手 お見事、クリティカルチケットを差し上げます。

エド・ウォーデン は……なるほど……ありがとうございます。

system [ エド・ウォーデン ] チケット : 1 → 2

語り手 では、あなたは特に際立って珍しい事件は見つけられませんでした。世を儚んで自殺することは、そう珍しくもないようです。ただ一つ、気になる記事があるとすれば…
骨接ぎのお医者が、縊死者の通報をしたというものをみつけますね。
名前までは明かされてはいませんが。

エド・ウォーデン なんと……その医者は……しかし、妹尾文恒さんのようなきがいたしますね。
それはやはり一年前ですか。

語り手 ええ、一年前のことです。

エド・ウォーデン わかりました。
それを……掘り起こしたと?
彼はそのようなことをした後ろめたさから奇妙な言動をとっていたのでしょうか。
あるいは殺害した……とまでは考えすぎでしょうね。
了解です。……真崎先生、もしくは池田脳病院についても調べてみましょうか。
何事もなければ大丈夫です。

語り手 池田脳病院についてですね、せっかくですので<図書館>を振りましょうか。

エド・ウォーデン はい。
CCB<=60 【図書館】 (1D100<=60) > 60 > 成功

語り手 順調でございますね。

エド・ウォーデン ええ、幸運でした。

語り手 池田脳病院については特に不審な点は見つけられないでしょう。記事に書いてある限りでは、あなたが安心して妹尾十三を任せられる病院ですよ。

エド・ウォーデン そうですか……。そうですよね。
非常に……昨日の真崎先生の様子が気になりますが、普通の良い病院ですよね。

語り手 ええ、記事にはそう書かれています。
もっとも、金を握らされた記者に書かれたものであれば信ぴょう性など知れたものではありませんが。
その是非はあなたにはわからないでしょう。

エド・ウォーデン わあ……有難うございます。図書館ではこれ以上のことは出てはこ無さそうですね。
調べ物を終えて、病院に向かいましょう。

語り手 承知いたしました。
《池田脳病院》
あなたが再び病室を訪れると、十三がベッドに座り、虚空を見つめています。
心ここにあらずといった様子でした。

エド・ウォーデン 声をかけてみましょう。毒か……
「……十三君、こんにちは」

語り手 あなたの姿を認めると、十三は弾かれたように立ち上がり、ひどく安堵した様子で胸を撫で下ろすのです。

妹尾 十三 「ああ、センセ! ご無事だったのですね! アニキや下男の真崎に食べられてしまっていはしないかと、食事も喉を通りませんでした」
「ここだけの話、窓の外から見える道を行き交う人間のうち、もう半数ほどは人食いに変わってしまっています」
「ねぇセンセ、あなたは違うでしょう? あなたはまだ、元のセンセのままでしょう?」

エド・ウォーデン 「ええ、そのはずですよ。
 昨日と変わりなく、元のわたくしです」
「ごはんをあまり食べていなかったのですか?
 いけませんよ、続くようだと体調を崩してしまいますから」
近くの椅子を引っ張ってきてベッドのそばに座りましょう。

語り手 椅子を引き寄せると、十三は上半身を前のめりにさせます。

妹尾 十三 「ごはんといえば、こうして座敷牢に閉じ込められるより少し前、私はカッフェ通いに狂っていたのですよ」
「底濱駅近くの【倶楽部213】という、モダンなカッフェでしてね、そこでしばしば顔を合わせる呉という男に、僕は参っていました。細面の美丈夫で、逞しい青年です」
「しばしば顔を合わせては、焼林檎やらクロークムシューやらを分け合い食べたものです」
「クロークムシューという食べ物を知っていますか? こんがりと焼いたパンに、薄切りの肉を挟んだハイカラな食べ物です」
「なんの肉なのかと尋ねたら、『ムシューの肉だ』とからかわれました。ムシューとは、紳士という意味だそうですよ」
「まだあすこ以外で見たことのない食べ物ですが、きっと欧羅巴あたりの人間が持ち込んできたのでしょう。ここは港が近いですから」

語り手 十三は大変楽し気に話を続けます。

エド・ウォーデン 「ああ、そのようにハイカラな物があるのですね。
 わたくしも気になってきました」
「クロークムシュー……」
呉という人に言われる分には、人肉がどうだとは思わないのだな……。
昔のことだしな。
「呉さんという方とは、どのようなお話をすることが多かったんですか?」

妹尾 十三 「異国の話であるだとか、船旅の話であるだとか」
「船の上はたいそう揺れるそうですよ、大の男であっても船酔いに参ってしまってとても陸が恋しくなるのだとそうです」
「そうして船の長旅で体調を崩したものにはラム酒を飲ませれば一発なのだとか。ふふ、おかしな話ですよね」
「ですが――呉は、彼はもういません。船乗りでしてね。また違う街へと去っていきました。だけどそれがどうしたと言うのでしょう。思い出は胸の内に残っていますから」

エド・ウォーデン 「……なるほど、それは興味深い。素敵なご友人がいらっしゃったのですね。
 そのお話も私も聞ければよかったのですが。しかしその方も次の船旅で頑張っているのでしょう」
「そういえば十三君、お話は変わりますが……」

語り手 その言葉を聞き、十三はしゃんと居住まいを正しました。

妹尾 十三 「はい、センセ」

エド・ウォーデン ううん……可愛らしいものですね。うん、気合を入れなければ。
「君がわたくしに見せたがっていたもの……と思しきものを持ってきました。
 もしかしてこれですか?」
他のガラクタ類とともに白い骨、日記の切れ端などを見せてみます。

妹尾 十三 「ああ、これ、これです! アニキに齧り取られてしまったのです」

語り手 十三はその骨を指さしました。

妹尾 十三 「ということは、アニキには知られなかったのですね、僕がその骨を隠している事」

エド・ウォーデン 「ああ、やはりこれが……?
 ええなんとか。これがどのようなものかもおそらくまだご存知ではないかと」

語り手 十三は深く息を吐いて胸をなでおろします。

妹尾 十三 「ああ、よかった。本当に良かった。またキャビネットにしまわなくては」

エド・ウォーデン 「そうですね。これは……戻しておきましょう。
 しかし十三君、君の小指がその様になってしまった経緯を兄君にもたずねてみたのですが」

妹尾 十三 「はい」

エド・ウォーデン 「……君は一年前お家を飛び出してしまった日があったとか。
 半月ほど、戻らなかったと聞きました。……覚えがあるでしょうか?」
ここで聞いて大丈夫だろうか……。

妹尾 十三 「アニキはどうしてそのような嘘を……」
「センセを謀ろうとしているに違いありません、気を付けてくださいセンセ」

エド・ウォーデン 「嘘……しかし、君の小指は…… 失礼。
 とてもここ一年かそれほどで無くなってしまったとは思えないような、きれいな有様なのですよ」
嫌がらなければ手を取って小指を見てみる…?

語り手 嫌がる様子はありません。見てみるのであれば、<医学>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=75 【医学】 (1D100<=75) > 14 > スペシャル

語り手 つるつるとした断面です。文恒の言う通り、ずっと昔に治った傷痕のように。
あなたの問いかけに十三はあなたの耳に口元をそう、と寄せました。

妹尾 十三 「私が飛び出したのではありません。アニキに連れ出されたのです……ここだけの話です、私は人食いの連中が全体どこからやって来て、人間に成り代わり始めたかを知っているのですよ」

エド・ウォーデン 「……そうなんですか?
 それならばそのものたちは一体どちらからいらっしゃったのでしょう」
声を抑えて聞いてみることにいたします。

妹尾 十三 「いいえ、ここでは言えません。何となれば、このベッドの下にも、あの悍ましい食人鬼が潜んでいるのですから。どうか後生です。私の日記を探してやってください」
「隠した場所は、ここでは言えません。呉を、追ってください」

語り手 十三は低く掠れる声を抑え、そう囁きました。

エド・ウォーデン 「呉さん? それは……」
去ってしまった船乗りの名ではないのだろうか。
そう思っても、彼の様子を見てはそれ以上言うわけにも行かないでしょうね。
「わかりました。ひとまずは……君の気に入りのカフヱーを訪ねてみましょう。
 ……また会いに来ますね。そうだ」
「良ければこれを。わたくしが最近読んだ本ですが……
 『彼は誰の奏者ころし』……よろしければ」
タイトルは物騒だが、そう恐ろしい内容ではないつもり。

語り手 その内に、ふっとあなたの背中に影が落ちました。

エド・ウォーデン 誰でしょう。……気配に振り返ってみます。

語り手 振り返ると、一体いつの間に背後へ、それも吐息が触れんばかりの距離にまで忍び寄られていたのだろう――艶めくカイゼル髭の長身痩躯が、視界いっぱいに飛び込んだのです。

真崎 敬之 「お話の最中に申し訳ありませんが、そろそろ病院を閉めなくてはなりません。学会の準備がありますのでね」

エド・ウォーデン 誰も彼も距離が近い……ぎくりと肩を強張らせつつ
「ま、真崎先生……いつからそこに。
 すぐに声をかけてくださればよろしいのに」
と応えるでしょう。

真崎 敬之 「院内で声を張るわけにもいきませんので」

エド・ウォーデン 「ああ……なるほど」それはそうだ。
「お邪魔しております。
 なるほど……今日は学会の日でしたか、遅れてしまっては事ですね。
 それではすぐに失礼いたします」

語り手 それまで息をひそめていた蝉の声が、驚いたように一斉に鳴き始めました。
十三はあなたから本を受け取ると力なくベッドに身体を預け、骨の浮いた手を弱々しく振ることでしょう。

妹尾 十三 「センセ、感想を必ずお伝えします」

エド・ウォーデン 「ええ、君とその本についてお話するのを楽しみにしています。
 十三君、また来ますね」
手を軽く振り返して、病室を去ることにします。

妹尾 十三 「ああ……センセ。……左様なら」

語り手 あなたは池田脳病院を後にすることでしょう。
まだ昼の太陽がわずかに傾き始めた時間です。次はどこへ行かれますか?

エド・ウォーデン はい……せっかくなので、教えてもらったカフヱー【倶楽部213】に向かってみましょうか。
呉という人物がいるとよいのですが、ううむ。

語り手 あなたが倶楽部213に行こうと思えば、ああ確かに底濱市中心部の繁華街でそんな看板を見かけた覚えがあるやもしれぬと思い出すでしょう。
記憶を頼りに底濱市中心部の繁華街をぶらり立ち歩くと、少し奥まった路地にその店はありました。ごく普通のカッフェ然とした造りの店構えですが、表には【会員制】と書かれた看板が立っています。
〈アイデア〉〈知識〉をどうぞ。

エド・ウォーデン たいへんだ……。クラブ制なのか…
CCB<=85 【アイデア】 (1D100<=85) > 91 > 失敗
わあ…知識も振ってみます。

語り手 どうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=85 【知識】 (1D100<=85) > 28 > 成功

語り手 あなたはここが紹介人のない客は決して入店のあたわない秘密倶楽部――などではなく、どうやら同性愛者の社交場となっているようだと分かるでしょう。
入りますか?

エド・ウォーデン なるほど色々大丈夫だろうか。
しかし十三君のことがありますから。入ってみようとしてみます。

語り手 《倶楽部213》
舶来品の蓄音機からニューオーリンズ・スタイルのジャズ音楽が控えめに掛かり、楽しそうに談笑する人間たちがいます。
男女の同席は見られず、男は男と、女は女と親密そうに頬を寄せ合いグラスを合わせているのが見えました。
風紀が乱れているといった様子は少しもなく、皆この場を上品に楽しんでいるようです。

店員 「初めて見る顔だ。ご注文は?」

語り手 カウンターの向かい側でグラスを拭く男性定員があなたにそう言葉をかけます。

エド・ウォーデン 「よろしければミルクを。
 ……妹尾十三さんの紹介でまいりました」

定員 「ああ、ジュウゾウか。お酒じゃないんですねぇ…」

語り手 そういいながら、店員は注文を承る。

エド・ウォーデン いいのか……ありがたい。
「ええ。こちらにいたという呉なる人物を訪ねてきたのですが、お心当たりはございませんか」

語り手 その言葉に店員は首を横に振ります。

店員 「そういう名前のお客さんがいたことは覚えているが、あんまり詳しくはわからないな」
「でもジュウゾウなら覚えてるよ。細面のキレイな顔した坊ちゃんだ。まだ黒マントが似合いそうな、あどけない坊ちゃんだったね。飲めもしない酒を飲まされて、あすこの辺でひっくり返っていたよ」

エド・ウォーデン 「ええ。わたくしの友人なのです」
さされた方を見てみましょう。人がいなければ、ミルクを頂いたあとそちらで飲みましょうか。

語り手 ソファですね。既にお客が座っているようですが、一人です。

エド・ウォーデン その座っている客に何か気になる点は……ないでしょうね。
普通のお客さんでしょうか。

語り手 普通の客のようですが、誰か待ち人がいるらしく暇そうにしていますね。聞き込みはできるかと。

エド・ウォーデン 待ち人か……後からなにか言われなければいいが……
そうですね、声をかけてみましょう。
「失礼。少々お話をよろしいでしょうか」
あいている方の席を指しながら

「……なんだ?」

エド・ウォーデン 「こちらの席に友人がよく座っていたと聞いたもので……。
 少しの間この席に座りたいのです」

「ああ…まあ、かまわんよ」
「連れが来たらテーブルに移動するつもりでいたから」

エド・ウォーデン 「ありがとうございます。
 貴方の待ち人がいらっしゃるまでには退きますから。」
「ああ、そうでしたか」
「それではそれまで少しお話を。
 ……ジュウゾウという少年……あるいはクレという青年のことはご存知ではありませんか?」
「わたくしの友人と友人の知り合いなのですが……」

「呉、呉――ああ、あの男前か。暫く前はよく見たな。最近めっきり見ないが、違う街に流れていったんじゃないか」
「酔いつぶれていたところを線の細い優男に抱えられて出ていったのを見たのが最後だ」
「優男の顔はよく覚えていないが、右手に包帯をグルグルと巻いていたのが印象的だったな……」

エド・ウォーデン 「優男……それはジュウゾウという少年ではない…?」
右手に包帯ぐるぐるも気になるが。

「悪いが、ジューゾーという名前について心当たりはないな…」

エド・ウォーデン 「そうですか……」

語り手 あなたたちがそんな話をしていると、カウンター席の方から声がかかります。

青年 「あんた、ジューゾーの何だって? 記者か探偵かなにかかい?」

エド・ウォーデン 「こんにちは。
 十三君はわたくしの友人です。こちらでお世話になっていたという呉さんを訪ねてまいりました」
「わたくしは……そうですね。
 医者をしているものです」

青年 「ふうん、そうかい。あんた、あの坊ちゃんの。まあ一杯付き合ってくれよ」

語り手 そう言って青年は澄んだグラスをあなたに差し出します。
<APP×5>か<信用>で詳しい話を聞きだすことができます。
奢られた酒を飲む場合、CON×3に成功すれば酔いつぶれずに<信用>に+50できるでしょう。
CON×3に失敗してしまった場合は、APP判定が自動成功したものとみなします。
どちらを選ぶかはお任せしますよ。

エド・ウォーデン うーーーん……CONは心許ない。
APPを駆使する……か……?

語り手 どうぞ。どのように相手を魅了させますか?

エド・ウォーデン 魅了 魅了……? そうか、顔か……危ないな。酒に酔っても危ないのだが
いや……うん、やはり酒を飲みます……頑張ろう。

語り手 さようですか。
ではあなたは度数も知れぬアルコールの注がれたグラスを手に取るでしょう。

エド・ウォーデン 「……これを飲んだらよくお話をしてくださいね。Mr.?」
飲みましょう……。

語り手 ではCON×3をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=(12*3) 【CON】 (1D100<=36) > 6 > スペシャル

語り手 あなたはウォッカを一息に煽りました。喉が灼けつく熱さに見舞われますが、それは一瞬のこと。それでは、信用に+50をどうぞ。

エド・ウォーデン 「………っ…… ふぅ……」
CCB<=15+50 【信用】 (1D100<=65) > 63 > 成功

青年 「……へえ、こいつはたまげたね。本当に飲むとは」

エド・ウォーデン 「ええ。随分強いお酒を飲ませてくれてありがとう。
 それで、十三君のことをご存知の様子でしたが……」

青年 「あの坊ちゃんは、これですぐにひっくり返ったんだがね?」

語り手 にこりと青年は笑みを浮かべました。

エド・ウォーデン 「なるほど……彼にも同じことをしたのですね。
 良い趣味をおもちで……」怒るべきか否か…

青年 「それであの坊ちゃんか――底濱埠頭の辺りをふらふらしてたって聞いたことがあるよ。この店を出て東の方角か。そこで妙な風体の灯台守と、何か怪しげなやり取りをしていたって言ってた子もいるね」

語り手 青年はあなたの飲み干したグラスを指先でなぞり上げます。赤く染まり始めたあなたの耳元に唇を寄せて、こう挑発的に囁くのです。

青年 「あすこは貧民窟が傍にあってね、いつも犬を煮ているような臭いがするんだ。残飯屋が毎晩通りがかっては黒山が出来る、忌々しい区画だよ」
「何の用があったか知らないが、おおかた──」
「浮浪者どもに“おかま”を掘られに行っていたのじゃないかね」

語り手 あなたが青年の顔を見るならば、その口端は愉快そうに吊り上げられていることでしょう。

エド・ウォーデン 「―――」
「……色々と教えていただいてありがとうございます。
 ですが憶測で妙なことを口になさるものではございませんよ」
「それにしても灯台守ですか……船乗りではなく?」

青年 「ああ、灯台守さ」
「あんたも行くかい? それなら背中には気を付けたほうがいいだろうな」

エド・ウォーデン 「ええ、伺ってみようかと。……背中…?」
刺されるのか…?

青年 「その面で無事で帰ってこられたらまた酒を一杯奢ってやるよ」

語り手 青年は言いながらあなたの顎先を指で触れるのでした。

エド・ウォーデン 「……残念ながらわたくしはミルクのほうが好きなのです。
 好みが合いませんね」
「けれどお話してくださって助かりました。
 また来ると思います」

青年 「そうか。また待ってるぜ、美人の先生」

語り手 青年はウィンクなどをしますが、もちろん無視して立ち去っても構いません。

エド・ウォーデン 気がいいんだかなんなんだかわからん……
曖昧な笑顔を浮かべておきます。
十三君がよく座っていたという席には、何も隠されて無さそうですか?
日記の切れ端とか……

語り手 いいえ、特には見当たらないでしょう。もしも隠されていたとして、きっと清掃の時に捨てられてしまうはずです。

エド・ウォーデン なるほど、わかりました。あと三枚もあるというのに、どこに……。
では酔いを覚ますのに牛乳やら水やらを頂いたら、埠頭の方にまいりましょうか。
いや……今の時間はどのくらいでしょうか。

語り手 夕方よりは前です。早く行かねば日も暮れて、埠頭近くの路地も薄暗くなるでしょう。
あなたは今は武器を持ち歩いておりませんから、暗いところで襲われればひとたまりもないでしょうね。

エド・ウォーデン 武器か……。かと言っていえに長銃があるでもなし。
あったとして扱いに慣れているわけでもなく……
うーん……埠頭に行って、自宅まで戻ってくるというのは、何事もなければ明るいうちに済みそうでしょうか。

語り手 ええ、それであれば間に合うことでしょう。

エド・ウォーデン なるほど……では向かってみましょう。
いざとなれば資料本で殴ろう…
灯台守の元へ。

語り手 承知いたしました。
あなたはお会計をカウンターに置くと、店を後にするでしょう。
《底濱埠頭》
風が強い。塩辛いほどに湿った海風が、容赦なく唇を押し広げます。遠く空はかき曇り、気の滅入るような色をしていました。
埠頭をまっすぐ灯台の方へ向かって歩いていると、正面からやって来る、ボロ布を顔中に巻きつけた男と出会うことでしょう。
ボロ布の隙間から覗えるその顔は、どこか犬めいた印象を受けます。その男は上唇に鋭い裂け目があり、病気にしてもあまりに見慣れぬ顔つきでありました。
暗い橙色に濁った手肌は、日に焼けたゴムのように固く締まり、ひどく粉を吹いているのです。
1/1d4の正気度喪失。

エド・ウォーデン CCB<=63 【SANチェック】 (1D100<=63) > 36 > 成功

system [ エド・ウォーデン ] SAN : 63 → 62

灯台守 「見ない顔だね。この辺に面白いものはないよ。もっと明るい街の方へ行ったらどうかね。これは親切で言っているんだが」

エド・ウォーデン 「ええ……そうでしょうね。ありがとうございます。
 しかし、今日は用があってまいったのです」

灯台守 「用?」

エド・ウォーデン 「ここで灯台守をされているという人に会いに」

灯台守 「……いいか、己とあんたは友達じゃない。それどころか、あんたは己の友達とすら友達じゃあない。そうだろ?」

語り手 そう言って、男は一歩、二歩と後退ります。

エド・ウォーデン 「そうかもしれません。十三という名の少年をご存知ではありませんか」
どうしてさがって行っちゃったんだ。心理学をお願いします。

語り手 承知いたしました。
SCCB<=70 心理学 (1D100<=70) > 13 > スペシャル
この男はあなたを訝しんでいる様子ですが、同時に値踏みしているようにも見えるでしょう。『友達じゃない』、その言葉に含みを持たせているように感じます。

灯台守 「その十三って奴と、己と、あんたに――全体なんの関わりがあるって言うんだい」

エド・ウォーデン ううん……
「実は、彼の友人の”呉”という人物を追っていたら……あなたについてのお話を聞いたのです。
 わたくしは”呉”という方にお話を聞いてみたかったのですが、船乗りで、もう別の街へ行ってしまっただろうと聞いて」

灯台守 「呉? 誰だそいつは。知らねえよ」

エド・ウォーデン 「……倶楽部213という場所をご存知ではありませんか?」

灯台守 「いや、知らん。何かの店か? 己にそんなところで遊ぶ金があると思うか?」

語り手 ぼろをまとった男はもう三歩、あなたから遠ざかるでしょう。

エド・ウォーデン 「どうでしょうか。
 わたくしはそこで……あなたと思しき人物が、その”呉”という人物を負ぶさって帰ったというお話を聞いたのみです」
難しそうだな……。なんだろう、信用してもらうのではなく、賄賂を握らせるのがいいのかな……。

語り手 近づこうとすれば、その分男は遠ざかりますね。背を向けて逃げる様子こそは見せませんが。

灯台守 「だいたいあんたは何なんだ。名乗りもしないで」

エド・ウォーデン 「ああ……なるほど。申し遅れました」
「わたくしは……エドヴァルド・ウォーデンと申します。
 十三君の友人で、医師をしております」

灯台守 「……医師? あんた、その十三って奴になんて呼ばれている?」

エド・ウォーデン 「うん…? 確か、センセイ、と呼ばれることが多かったように思います」

語り手 あなたがそう言うと、ふっと男の警戒が解かれたことに気が付くでしょう。

灯台守 「ああ、あんたがボウヤのセンセかい」
「悪かったね。悪趣味な雑誌記者かと思ったんだ。近頃はそういうの、多いだろう」

エド・ウォーデン 「そうでしたか……。なるほど、店でも記者に間違われました」
「先に名乗っておけばよかった。
 ……ということはやはり、十三くんとはお知り合いなのですね」

灯台守 「ああ。ボウヤはな、哀れなヤツなんだ。ある時ふらふらと港を歩いていて、己の目の前で海に落っこちたんだ」
「慌てて引き上げて、小屋で休ませてやったら、ここが太平洋の彼方にある、化物の暮らす島だと思い込んでしまった。自分の家の場所も言えない有様だったから、長屋の連中と細々面倒を見てやったよ」
「今は脳病院にいるんだろう。時々その近くまで行って、手を振ってやることがある」

語り手 そう言いながら、男は自分の懐をまさぐりながらあなたに近づきます。

エド・ウォーデン 「そうでしたか。海に……助けていただいたんですね」
なんだ……? ちょっとだけ警戒します。

灯台守 「センセが来たら渡してくれと言われた封筒があるよ」

語り手 奇怪な風体の男は、懐から薄汚れた封筒を取り出しました。

エド・ウォーデン 「封筒……?」
受け取れるようなら受け取ろうと手を伸ばします。

語り手 受け取ってみると、夏の盛りだと言うのにその封筒は少しも温まっていません。
封筒を開けると中身は破り取られた日記のページでした。

灯台守 「ボウヤには一体なにが見えていて、なにが見えていないんだろうな」

エド・ウォーデン 「……ええ、それはわたくしも気になっていたところです。
 それを探りに、こちらへ参りました」
日記の頁に目を通してみます。

語り手 それでは、日記をお読みになりますね。

妹尾 十三 『当然ご存知でありましょうが、私はアニキによって座敷牢に四年ほど監禁をされておりました。ですがある日、センセによる往診が終わるや否や、私は頭に麻袋を被せられて、そのまま底濱埠頭へ連れて行かれ、そこで阿呆船に乗せられたのです。阿呆船は様々な気狂い共でひしめき合っており、私は気も狂わんばかりでした。頭に鶏のトサカなぞつけた水夫に行き先を聞くと、私たちは海乙那の棲む島へ連れて行かれ、そこで毒牙の露と化すそうです。海乙那です。それはどこか狼に似た顔を持つ、食人鬼だそうです。』
『私は、その島で二年を過ごしました。大半の気狂い共は世をはかなんで、進んで海乙那に食われましたが、なに、話してみれば存外気のいい連中で、私たち人間よりもよほど先進的な考えをする連中でありました。何も人間を選り好んで食うわけではなく、死ねば肉なのだから感傷的になって燃やしてしまうより、新鮮な内に食ってしまえば無駄がなくていいではないかというのがその理屈です。』
『その島で雌の海乙那と夫婦にならないかと誘われましたが、郷里のアニキが気になったので、後ろ髪を引かれながら私は日本へ戻ってきました。なにしろ気のいい連中でしたので、今でも時々、夜中に私の部屋を訪ねてくれます。ええ、この部屋にです。そうです――私は海乙那共に日本の歩き方をすっかり教えてしまったので、そうした塩梅で彼らがやって来れるようになったのです。しかしそれは問題ではございません。』
『古くからこの国には忌まわしい人食いがいて、品川の辺りや底濱の外れは彼らの縄張りだったのでありました。それを私が海乙那に渡りをつけてしまったので、忌まわしい人食いの連中が怒ったのです。アニキや、下男の真崎に成り代わった連中は、私を座敷牢に閉じ込めたりして、自由を奪いました。こうして真実を話せる相手はセンセだけなのですよ。アレゴリなどでは、ありません。人を食わずにいる子供は、あるいはあるかもしれない。救えよ救え。子供――。』
『私が死んだ後は、どうぞ、その遺骸を食べてください。私の身体には種がありませんでしたので、子も遺せず、食べてすらもらえないのであれば、到底生きてきた甲斐がないではありませんか。どうぞ、弔いと思って、私の遺骸を食べてください。それだけが私の本当です。それですっかり、悔いはありません。』

情報

注記 〔注:アレゴリ=寓意。象徴的な存在を用いる、例え話のような表現技法のこと〕

メイン

灯台守 「哀れな奴だよ」

語り手 男は首を横に振ります。
これらの日記について、「①〈歴史〉〈知識:1/2〉」と「②〈知識:1/5〉〈文学系の技能:1/2〉〈オカルト1/2〉〈中国語と知識の組み合わせロール〉」で情報があります。

資料

妹尾 十三 《十三の日記、三》
當然ご存知でありませうが、私はアニキによつて座敷牢に四年ほど監禁をされてをりました。ですが或る日、センセによる往診が終はるや否や、私は頭に麻袋を被せられて、そのまゝ底濱埠頭へ連れて行かれ、そこで阿呆船に乘せられたのです。阿呆船は樣々な氣狂ひ共でひしめき合つてをり、私は氣も狂はんばかりでした。頭に鷄のトサカなぞつけた水夫に行き先を訊くと、私たちは海乙那の棲む島へ連れて行かれ、そこで毒牙の露と化すさうです。海乙那です。それはどこか狼に似た顏を持つ、食人鬼ださうです。

私は、その島で二年を過ごしました。大半の氣狂ひ共は世をはかなんで、進んで海乙那に食はれましたが、なに、話してみれば存外氣のいゝ連中で、私たち人閒よりもよほど先進的な考へをする連中でありました。何も人閒を選り好んで食ふわけではなく、死ねば肉なのだから感傷的になつて燃やしてしまふより、新鮮な內に食つてしまへば無駄がなくていゝではないかといふのがその理窟です。

その島で雌の海乙那と夫婦にならないかと誘はれましたが、鄕里のアニキが氣になつたので、後ろ髮を引かれながら私は日本へ戾つてきました。なにしろ氣のいゝ連中でしたので、今でも時々、夜中に私の部屋を訪ねて呉れます。えゝ、この部屋にです。さうです――私は海乙那共に日本の步き方をすつかり敎へてしまつたので、さうした鹽梅で彼らがやつて來れるやうになつたのです。しかしそれは問題ではございません。

旧くからこの國には忌まはしい人食ひがゐて、品川の邊りや底濱の外れは彼らの繩張りだつたのでありました。それを私が海乙那に渡りをつけてしまつたので、忌まはしい人食ひの連中が怒つたのです。アニキや、下男の眞崎に成り代はつた連中は、私を座敷牢に閉ぢ込めたりして、自由を奪ひました。かうして眞實を話せる相手はセンセだけなのですよ。アレゴリなどでは、ありません。人を食はずにゐる子供は、或いはあるかもしれない。救へよ救へ。子供――。

私が死んだ後は、どうぞ、その遺骸を食べてください。私の身體には種がありませんでしたので、子も遺せず、食べてすらもらへないのであれば、到底生きてきた甲斐がないではありませんか。どうぞ、弔ひと思つて、私の遺骸を食べてください。それだけが私の本當です。それですつかり、悔いはありません。

メイン

エド・ウォーデン 「これは……」
はい、それぞれ振ってみましょう。
CCB<=85/2 【知識】 (1D100<=42) > 10 > 成功
CCB<=85/5 【知識】 (1D100<=17) > 99 > 致命的失敗
あっ…

語り手 さようでございますか。

エド・ウォーデン ええ……。 悲しいですね。
……ほかもほぼ初期値のため、②は諦め……いややっぱり振ってみても?

語り手 一つでも成功すればそのファンブルは見なかったことにいたしましょう。どうぞ。

エド・ウォーデン ウーン、ありがたい……ちなみに文学系の技能と言うと、図書館は外れるのでしょうね。

語り手 ええ、図書館は使えません。

エド・ウォーデン わかりました。

語り手 ですが、知識同様<図書館/5>に挑戦いただいても構いませんよ。

エド・ウォーデン うっ……有難うございます。挑戦してみます。
CCB<=5/2 【芸術(文学)】 (1D100<=2) > 69 > 失敗
CCB<=5/2 【オカルト】 (1D100<=2) > 23 > 失敗
CBRB(1,85) 知識と中国語 (1d100<=1,85) > 36[失敗,成功] > 部分的成功
CCB<=60/5 【図書館】 (1D100<=12) > 50 > 失敗
なるほど。

語り手 ……さようでございますか。

エド・ウォーデン ええ、不勉強で大変申し訳ございません……。

語り手 いえ。それではファンブル処理を行いましょう。
choice 日記を風が攫う 読んでいてつい日が暮れる (choice 日記を風が攫う 読んでいてつい日が暮れる) > 日記を風が攫う
ごう、とひときわ強い風があなたに吹きつけます。

エド・ウォーデン 「うっ……」
うわあ……手から離れたと分かったらすぐ、回収しに行きたいです……。

語り手 手に持っていた日記は風に攫われ、海のほうへ。
いままさに波に飲まれようとしています。回収するのでしたら、<水泳>をどうぞ。

エド・ウォーデン 「ああっ……行けない」
荷物を投げ出して、飛び込んでいきましょう。死にそう。
CCB<=25 【水泳】 (1D100<=25) > 48 > 失敗

灯台守 「おい、あんた! 何してんだ、溺れちまうぞ!」

エド・ウォーデン 「すみません、でも、手紙が…… うぐ……」手紙は波に飲まれてしまったでしょうか

語り手 灯台守も飛び込むでしょう。そうですね……

雑談

藺草 とても優しい。

メイン

語り手 ではこういたしましょう。<CON×10>からスタートです。
ラウンドが進行するごとに倍数が下がります。
ラウンドに行動できるのは、<水泳>か男にしがみつくかです。気絶すれば、男に回収されるでしょう。
<CON>ロールに失敗した場合、いわずもがな溺水による1d6ダメージが入ります。

エド・ウォーデン わ、わぁ……了解です。
水泳に成功した場合は、紙を回収できた、ということになるのでしょうか。

語り手 ええ、そうです。一回の水泳成功で1d3枚回収できたことにいたしましょう。
では、はじめてください。まず1回目。CON×10から。

エド・ウォーデン CCB<=(12*10) 【CON】 (1D100<=120) > 37 > 成功

語り手 息を吸って、手を大きくのばすでしょう。<水泳>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=25 【水泳】 (1D100<=25) > 88 > 失敗
「……っ……」

語り手 日記は波にさらわれ、あなたの指からすり抜けます。
CON×9をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=(12*9) 【CON】 (1D100<=108) > 75 > 成功
諦めずに日記の回収をしようとするでしょう

語り手 では<水泳>をどうぞ

エド・ウォーデン CCB<=25 【水泳】 (1D100<=25) > 11 > 成功

語り手 素晴らしいですね。1d3をどうぞ。

エド・ウォーデン 1d3 日記回収 (1D3) > 3

語り手 お見事。すべての日記を回収することができるでしょう。回収するのが早かったためか、読めなくなるほど文字がにじんではいません。

エド・ウォーデン 神が微笑 ……神などいない。いやでもありがとう、神様……
「……よし…… っ……!!」

灯台守 「気は済んだか、あんた! さっさと上がるぞ!」

エド・ウォーデン 「は……はい!」

語り手 ぐい、と襟首を握られ、泳ぐ灯台守に岸まで連れていかれるでしょう。

エド・ウォーデン とても優しい。おとなしく連れて行かれます。

語り手 そこで男に下から支えられると、あなたは陸へのぼることができます。

灯台守 「くそ……おい、ひっぱれ。服が水を吸っちまった」

語り手 男は先に陸へあがったあなたに手を伸ばすでしょう。

雑談

エド・ウォーデン 選択肢が見える…。

メイン

エド・ウォーデン 「ええ、無論です……。
 世話をかけました」
目一杯手をのばして、引っ張り上げましょう。

語り手 あなたが男の手を握ると…その指は氷のように冷え切っていました。

エド・ウォーデン か、体が冷えておられる。
早く回収して……あたたまれる場所があるといいのですが。

語り手 さて、あなたが男をひっぱりあげると、「やれやれ酷い目にあった」とばかりに服を雑巾のようにしぼります。

エド・ウォーデン 「本当に申し訳ありません……。
 大丈夫ですか。随分体温が下がっているようですが……」

灯台守 「気にするな。夏の夜でも服は乾く」

エド・ウォーデン 「いや、しかし、手が随分冷えて……」
といってもできることはない……か……。

灯台守 「……なるほど、ボウヤも懐くわけだ。お優しい先生」
「だが気にするな。あんただって、馬車に乗っているときは区画一個向こうにどんな浮浪者がいるのやらなど思いを馳せることはないだろう」
「己もそんな奴らのうちの一人に過ぎん」

エド・ウォーデン 「……知人からは甘いばかりだと言われるのですが。
 しかしこうして出会ったからには、心配せずにはいられないというのが人の性でしょう。……」

灯台守 「己はお医者に診てもらって払える金なんぞ持ち合わせちゃいねえんだ」
「風邪はまあ、ひいちまったらその時はその時だ」

エド・ウォーデン 「……でしたら、これはお詫びになるでしょうか」
置いておいた荷物を広げて、その中から風邪薬と……飴玉を取り出しましょうか。

灯台守 「……なんでい。いつもこんな上等なもん持ち歩いてんのかい。それでこのあたりを一人でふらついて、肝が据わってるんだか考えなしなのか」

語り手 と言いつつも、男は興味津々にその荷物を眺めています。

エド・ウォーデン 「いつもではないですが……今日は色々とあったもので」
「……あった。これは風邪によく効く薬です。
 体調が悪くなったら、なにか食べ物を胃に入れたのちに飲んでください」
「それからこちらは……ええと。ただの飴ですが、お嫌いでなければ」

灯台守 「……誰かの食いかけじゃねえ飴玉なんてもん、初めて見た」

語り手 男はその二つをこわごわと手に取るでしょう。

エド・ウォーデン 「ええ。あついところに置いているとあまり良くないので、できれば涼しいところで保管してください」
今夏だが…

灯台守 「……そうかい」
「あんた、会う人会う人にこんなことしてるといつか素寒貧になるぜ」

語り手 男は貰った風邪薬と飴玉を、ぐっしょりと濡れる懐にしまい込みます。

エド・ウォーデン 「そんなにお人好しではありませんよ。
 あなたはわたくしに良くしてくれましたから」
「いわば命の恩人でしょう。
 本当ならばこれでは足りませんが……今日のところは勘弁してください」
海の方を眺めながら。
というか忠告までしてくれるのはいい人すぎるな…。

灯台守 「……………夏だったから助けてやったんだぜ。これが冬ならあんた見捨てて荷物だけ奪ってたところだ」

エド・ウォーデン 「そうでしたか……。
 夏にお会いできてよかった」

語り手 かすかに漂う獣じみた臭気を、塩辛い風が洗っていきます。それきり男は肩を縮こまらせて歩き去っていくでしょう。

エド・ウォーデン あっ 指のことを聞きそこねたな……。
その背にまた礼を言って帰りましょうか。

語り手 あなたが見送る背中のさらにその遠くで立ち込める雨雲を、チカリチカリと灯台が照らしていました。
これから嵐がくるのでしょうか。ともかく、そろそろ帰らねば日が暮れることでしょう。

エド・ウォーデン 「いけない……雨が降りそうだ」
遠くに認めた雨雲を見るやいなや、荷物を持って急いで帰りましょう。
家で手紙も乾かさなければ……大変な目にあった(ファンブル)。

語り手 それでは自宅に戻られますね。
《自宅》
あなたが自宅についたころ、予想通り外は雷雨となっていることでしょう。
すっかり濡れてしまった服と手紙は室内に干すしかありません。

エド・ウォーデン そうですね……私も濡れた服のままでは気持ち悪いですから、さっさと脱いで着替えましょう。
手紙は……うまく乾けばいいですが。

語り手 皺のよらないよう、丁寧に乾かすのであればDEX×5をどうぞ。失敗してしまっても、読めるものにはなるはずです。

エド・ウォーデン CCB<=(8*5) 【DEX】 (1D100<=40) > 62 > 失敗
う、ううん……。無念。できる限りのことはしました。

語り手 引っ張って皺の無いように整えようとしましたが、これ以上は紙がもたないでしょう。あなたにできるだけの手を尽くして、その日記を乾かします。
さて、本日は本降りとなってしまい外出は叶いませんが、室内でやっておきたいこと等ございますか?

エド・ウォーデン ううん……そういえば日記の①の情報というのは、ファンブルでなかったことになったでしょうか。
若しくは私が失念しておりましたらすみません。

語り手 ああ、失礼いたしました。ではあなたは「阿呆船」について次のことをしっていました。
阿呆船とは、15世紀のドイツ人作家、ゼバスティアン・ブラントの作である、諷刺文学であると分かります。様々な偏執狂、阿呆、白痴の人間達が一隻の船に乗り合わせ、阿呆国ナラゴニアを目指して船出する内容です。
おそらく、ウォーデン家にその本があったのでしょう。

エド・ウォーデン ありがとうございます。なるほど、それならば知っていたのでしょう。
となると、2つ目の情報もそのあたりに関連したものやも……。

語り手 かもしれませんね。

エド・ウォーデン 十三君もこれらの本に目を通して……そうして自らの体験に重ね合わせたのでしょうか。
しかし指のことが全くわからないし……それにこれが分かっても、十三君に色々と納得してもらうのは難しそうです。
うーん……できることはもう無さそうです。
明日の準備というと……そうですね今日のことがありますから。
得物になりそうなものを持っていく……?

語り手 得物…ですか。なんでしょう。

エド・ウォーデン といってもナイフか、あるいはいつも持ち歩いている万年筆しかないですね……。

語り手 ささやかでいらっしゃいますね。
銃の一つでも手に取られるのかと思いました。

エド・ウォーデン 奇襲が主なので……。銃は……ウーーン、長銃は家のどこかに置いているでしょうが目立つでしょうし。
ピストルは……手に入るのだろうか。

語り手 ピストル…経済的には持っていてもおかしくはありませんね。ですが家柄として持つのかは怪しげなところ。
あなたが個人的な興味として所持しているのであれば、可能でしょう。

エド・ウォーデン う……そうですね。主に脅し用でしょうが、持っていることにしても…?

語り手 構いませんよ。

エド・ウォーデン 有難うございます。ではそれを……ひとまず鞄に入れておきましょう。

語り手 あなたは鞄にピストルを忍ばせました。この時代のものですから、一発切りのものです。

エド・ウォーデン わかりました。使うタイミングには気をつけなければ……。
あとはもうございません。
他の日記の切れ端はどこだろうか……考えを巡らせながら眠ります。

語り手 ……。
それでは、あなたはそのまま眠りにつくでしょう。おやすみなさい。
しとしと、重い雨の烟る朝。あなたの下に、妹尾文恒から電報が届きました。

雑談

藺草 不安になる沈黙。
……そういえば十三君は大丈夫だろうか。あっ

メイン

妹尾 文恒 『ジウゾウ クビククリテ シス』

エド・ウォーデン 「……えっ」
思わず、電報を取り落とすでしょう。

語り手 十三の突然の訃報に、強い当惑と混乱を覚えることでしょう。
1/1D3の正気度喪失。

エド・ウォーデン CCB<=62 【SANチェック】 (1D100<=62) > 7 > スペシャル

system [ エド・ウォーデン ] SAN : 62 → 61

語り手 スペシャルですか。大変心が強くいらっしゃる。

エド・ウォーデン 「……………」
どうしてでしょう。分かっていたのでしょうか……。
分かっていて、行かなかった。………

語り手 ……どうでしょうね。ウォーデン先生。

エド・ウォーデン ……わかりません。
荷物をまとめて、病院か……妹尾家を訪ねましょう。

語り手 どちらへ先に行かれますか?

エド・ウォーデン ……妹尾家に行きましょう。
遺体がどちらにあるのかわかりませんが。ひとまず電話をするのがよいのでしょうか。

語り手 電話をつなげようにも、交換手からは相手が出てこないと告げられますね。

エド・ウォーデン 留守か、電話に出る余裕がないか…?
わかりました。どうしよう……病院に向かいましょう。

語り手 承知いたしました。病院ですね。
《池田脳病院》
病院に行くと、警察がいます。
背の低い警察官が、病室を盛んに出入りしているようです。カイゼル髭の長身痩躯が、それに眉一つ動かさずに応対していました。この場所で出来ることは特になく、真崎に話を聞ける状態でもないでしょう。
<聞き耳>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=51 【聞き耳】 (1D100<=51) > 91 > 失敗

語り手 さようですか。
雨に全てかき消されてしまったのでしょう。

エド・ウォーデン はい……。文恒さんもこの場にはいらっしゃらない?

語り手 ええ、見渡す限り文恒の姿はありません。

エド・ウォーデン では……ひとまず、急いで妹尾家に向かいましょう。
どうされてるだろうか……落ち込まれているだろうな……。

語り手 わかりました、妹尾邸に向かいますね。
《妹尾邸》
ウォーデン先生が呼び鈴を鳴らすと、一晩に十年も歳をとったように、やつれた顔の文恒が出迎えてきます。

妹尾 文恒 「センセイ――急なことでして、すみません。全体どうしてこんなことになったのか」

エド・ウォーデン 「妹尾さん……とんでもございません。直ぐ電報をくださって……
 ひとまず座ってください。顔色がとても悪い」

妹尾 文恒 「はい………はい………ああ、私としたことがセンセイを雨の中立たせるなど。お茶をお出しいたします、どうぞ中へ」

エド・ウォーデン 「十三君のことは……非常に……
 いえ、本当にお構いなく」
今度は引き留めよう。腕を掴んで、椅子に座らせる。

語り手 では、文恒は居間まで案内して茶を出そうと立ち上がったところをあなたに引き留められ、座り込みます。

エド・ウォーデン 「………」
なんと言葉をかければいいのか。
「……十三君のことは、病院から連絡が来たのですか」
まさか、直接見たわけではないだろう。

妹尾 文恒 「ええ、はい。真崎センセイによれば、昨晩あれの様子を見に行くと、どこから持ち込んだものか、麻縄で首を括っていたのだと」
「センセイ、なにか知りませんか。ねぇ、センセイ」

語り手 そう言うと、文恒は自分の顔の前で指を組んでうなだれました。

エド・ウォーデン 「……いえ……」
あれっ……麻縄ってそんなに長いものだったのでしょうか。
私のせいだったりするのか。ほんの指くらいの長さのものだと……

語り手 少なくともあなたが十三に見せたガラクタの麻縄ではないでしょう。
あなたのせいではありませんよ、ウォーデン先生。

エド・ウォーデン そうですか……。わかりました。
ううん……手段としてはそうでしょうね……。ありがとうございます。
「その縄の入手元が気にならないでは有りませんが、そうですか。
 十三君はそれほど……」
……一日だってもちません、と書いてあったはずなのに。

語り手 また、脳病院では普通、刃物や紐などの持ち込みは原則禁止とされていることは知っていていいでしょう。家具も、投げ飛ばしたり事故の無いよう壁に固定されるのがほとんどです。十三の私宅監置室のキャビネットのように。

エド・ウォーデン 成程、となると誰かが持ち込んだ、ということになるのでしょう。
これまでの人物の中に…?

語り手 かもしれませんね。

妹尾 文恒 「いつかこのような日が来るだろうと、覚悟はしておりました。ええ、本当です。覚悟だけはしておったのです」
「なにしろ、暫くは忙しなくなります。きっと葬儀は明後日になるでしょう。弟を哀れに思うのなら、ぜひいらしてください。どうか、ぜひ」

エド・ウォーデン 「ええ、それは……無論です。
 必ず参ります」
明後日、なにもないといいが。
しかしそちらの用事に一日中拘束されるということもないだろう。

語り手 その言葉を聞くと、文恒はぽつりとこぼすようにこう呟きます。

妹尾 文恒 「ああ、よかった」
「──センセイ、どうか正直なところを仰ってください。あれは、十三は、本当の気狂いだったのでしょう」
「センセイ、どうか仰ってください。あいつはもう手の施しようのない気狂いだったのだと。あのまま一生、元のようには戻れなかったのだと」

エド・ウォーデン 「………」

妹尾 文恒 「寛解など、己を慰めるための嘘だったのだと」

エド・ウォーデン 「……ええ、そう、だったのかも知れません。
 私は見て見ぬ振りをしていたのかも」
「それでも、私は……彼とまた、元のようにお話することを夢見ておりました」
「……十三君のこと、わたくしの力及ばず……
 申し訳ございません」

語り手 文恒はじぃ、とあなたの伏せられた睫毛を見つめます。

エド・ウォーデン 「……明後日、また参ります。
 こういっても難しいでしょうが……ご無理なさいませんよう」
特に表情に出すことはないでしょう。申し訳無さ気な顔をして許してほしいわけではなし。
私のせいにしてほしいのかどうかは、微妙なところです。

語り手 あなたの言葉を聞くと文恒はいっぺんに脱力し、ややあって、表情をなくして立ち上がりました。血の気の失せた顔のまま、ふらふらと玄関の方へ向かっていきます。

妹尾 文恒 「近所の人間に呼ばれておりまして。すぐに戻ります。葬儀ともなれば色々とあるようで。ええ、昨年に二度もやりましたから、慣れております。どうぞ雨足が弱まるまで今しばらく、ゆっくりなさっていってください」

語り手 そうして文恒は妹尾邸から出ていくのでした。
あなたが望むのなら、この邸内を探索することができるでしょう。もちろん、このまま何も知らずに帰ることも。

エド・ウォーデン そうですね……。
見ていきましょうか。
十三君の部屋から持っていったものも返さねばなりません……。

語り手 それでは十三の部屋から行かれますね?

エド・ウォーデン はい。

語り手 ≪十三の部屋≫
強烈な犬の臭いがします。部屋を見ると、床板が剥がされ、人が横たわれそうなほど長い窪みが空いていることに気が付けるでしょう。
窪みの中へ降りて〈目星〉を振ることができますが、いかがなさいますか?

エド・ウォーデン 何故……ん……?
くぼみへ降りて、目星を……振ってみましょう。

語り手 どうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=45 【目星】 (1D100<=45) > 41 > 成功

語り手 見つけてしまうのですね。
ではあなたは、土に混じり小さなエナメル質の鈍い輝きをいくつも見つけるでしょう。ええ、人の歯が、あちこち幾つも埋まっていることに気づいてしまうのです。

エド・ウォーデン 「………これは…歯…?」
何故このような場所に?
歯だけがあるのですか?

語り手 ええ、歯。だけです。骨も肉もございません。

エド・ウォーデン わからない……。それは大人の歯でしょうか?
それとも乳歯の類…?

語り手 大人の歯でございますね。

エド・ウォーデン いくつも、ということは一人の人間からいくつも取ったのか、あるいは複数人の人間の歯を取ってきたのか。
よく見てみますが、人の歯である、という以上に不審なところはありますか。

語り手 いいえ、特には。

エド・ウォーデン わかりました。どうするべきだ……?
歯については、いくつか回収してポケットに忍ばせておきましょう。

語り手 わかりました。一度窪みから出てみますか?

エド・ウォーデン はい、窪みの中にそれ以上なければ。

語り手 あなたがそこから這い出て再び床を見やると、
窪みはすっかり消え失せていました。まるで白昼夢を見ていたかのように、ただの床があるばかりです。
1/1D3の正気度喪失。

エド・ウォーデン CCB<=61 【SANチェック】 (1D100<=61) > 25 > 成功

system [ エド・ウォーデン ] SAN : 61 → 60

語り手 大変心の強いことで。

エド・ウォーデン 「窪みが……?」
いや……もちろん、驚いてはいる。
ポケットに入れた歯はどうでしょうか。消えていますか。

語り手 ええ、失せています。

エド・ウォーデン 自分に精神分析したくなってきた……。了解です。
犬の匂いなんかも失せていますか……。

語り手 犬の匂いは相変わらずです。

エド・ウォーデン なるほど、なんだ? 部屋の中を探してみますが、何かあるでしょうか。
ベッドの下だとか……

語り手 いいえ、どこを探してもその臭いのもとはわからないでしょう。
けれど何処からともなく漂ってくるのです。確かに、獣の匂いが。

エド・ウォーデン 私か…? 了解です。

語り手 その後ろできぃ、と扉のきしむ音がします。十三の部屋から少し離れたところ。あそこは確か、文恒の部屋ではなかったかと記憶していることでしょう。ちょうど扉が開いています。

エド・ウォーデン 「……?」
文恒さんだろうか。しまった、帰ってきたのに全く気づかなかった。
部屋をこっそりと出て、文恒さんの部屋の方へ向かいます。

語り手 覗いてみたところ、文恒の部屋の中には誰もいません。入りますか?

エド・ウォーデン ひとりでに部屋が開くこともないでしょう(私が訪ねてきたことで慌てて出てきたのかも知れませんが)。
何かいるかも知れないので、入ってみます。

語り手 ≪文恒の部屋≫
中に入ってみても、やはり誰もいません。部屋の中を見回してみると、ふと筆机の上に開きっぱなしの日記があることに気づきます。

エド・ウォーデン なるほど、日記を書いていたところだったのでしょうか。
よくないことだとは思っていますが……あの薬の事が書いていないだろうか。
……扉を閉めて、日記を読んでみます。

語り手 かしこまりました。
次のページが空白であるところを見るに、一番最近の記述であることがわかります。

妹尾 文恒 『こんなことを書くべきか今も私は決めかねている。弟は人を食っていた。それも殺して食っていた。完全な気狂いだったのだろう。かわいそうに。あれはもう何年も狂ったままだ。罪に問われることはないだろう。裁かれることはないだろう。私はそれが哀れでならない。罪を犯しても裁かれないことが、まるで人でないと言われているようで。必要なものを持っていこう。全てを、十三の正気に委ねよう。』

資料

妹尾 文恒 《文恒の日記》
こんな事を書くべきか今も私は決めかねてゐる。弟は人を食つてゐた。其れも殺して食つてゐた。完全な氣狂ひだつたのだらう。かはいさうに。彼れはもう何年も狂つたまゝだ。罪に問はれる事はないだらう。裁かれる事はないだらう。私は其れが哀れでならない。罪を犯しても裁かれない事が、まるで人でないと言はれてゐるやうで。必要なものを持つていかう。全てを、十三の正氣に委ねよう。

メイン

エド・ウォーデン ……呉という人物は本当に、船に乗っていなくなったのだろうか。

語り手 どうでしょう…誰もしばらく彼の姿を見ていないようですからね。

エド・ウォーデン わかりました。
……日記の……それ以前の記述にサッと目を通してみて、他になにか気になることは書いてありますか?
特に一年前のことなどは。

語り手 特段、気にかかる記述はありません。ずっと弟のことを気にかけているか、親の葬式の話であるとか、仕事の話でありましょう。

エド・ウォーデン そうですか……。今日、ようやく書くべきかと思ったところだったのですね。
ですがこの記述は、これではまさか。
必要なものとは……麻縄…?
ジロジロと見るのは気が引けますが、他に室内にて気になる場所はあるでしょうか。
机の引き出しの中ですとか。泥棒のようだな……。

語り手 あなたは手当たり次第に探してみますが、これ以上文恒の部屋から何かを見つけることはないでしょう。
そろそろ雨足も弱まってくる頃合いです。

エド・ウォーデン わかりました。文恒さんが帰ってきそうですね……。
総て可能な限り元に戻して、部屋を出ましょう。

語り手 あなたは居間に戻るでしょう。日暮れまで待っても、文恒が戻ってくることはありませんでした。

エド・ウォーデン ……どうしましょう。
流石に家を空けていくわけには……

語り手 ではこのまま夜の道を行きますか?

エド・ウォーデン 帰るのが難しいからといって泊めてもらうわけにも行かないだろうしな……。
うーーーーーん……
腕っぷしに自信がないので大人しく書き置きをして、帰りましょう……。

語り手 承知いたしました。
あなたは日が沈み切ってしまうまえに家に帰り、そして…それ以上、葬儀の日まで何かが進展することはありませんでした。
それから、数日が経ちました。ウォーデン先生はその間、仕事や論文の執筆などに追われているかも知れませんね。
納得のいく論文が書けたかどうか、EDU×5をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=(17*5) 【EDU】 (1D100<=85) > 60 > 成功

語り手 冷静に筆を進めることが出来たでしょう。
そのころ、文恒から葬儀の案内を受けます。
葬儀へ参列しますか?

エド・ウォーデン ええ。必ず行くと申しましたから。
喪服を着て参列いたします。

語り手 他に持ち物がございましたら、お申し付けください。

エド・ウォーデン ……では薬用の小さな瓶を一つ。
それ以外にはありません。

語り手 承知いたしました。
《葬儀》
やがて、十三の弔いは滞りなく済むでしょう。
葬儀の場で、沈痛な面持ちの文恒がウォーデン先生に話し掛けます。

妹尾 文恒 「センセイ、あれには親がおりません。肉親と呼べるものは己くらいのもので、さして友人もおりません。もしほんの少しでもあれを哀れんで頂けるのなら、どうぞ焼き場まであいつについて行ってもらえませんか」

語り手 本来、骨上げは主に遺族・親族のみで行われ、二人一組が決まりとなっております。けれど文恒は、是非にとあなたを呼んだのです。

エド・ウォーデン 「妹尾さん……。
 ええ、わかりました。わたくしでつとまるものならば、参りましょう」

語り手 あなたの快諾を受けて、文恒は絞り出すような声でただ一言「ありがとうございます」と言ってあなたの手を握りました。
あなたたちは最新鋭の機材が揃う火葬場へやって来きます。コークス燃料に電動送風機で、十三の骨は呆気ないほど早く上がってしまいました。
まったく綺麗な骨でしたが、唯一、頭蓋骨だけはボロボロに焼け溶けていました。

妹尾 文恒 「……骨を拾ってください、どうか」

語り手 あなたの隣で文恒が耳元に囁きます。

エド・ウォーデン 「……はい」
ひとつひとつ、壺の中に収めていくでしょう。

語り手 文恒は骨壺を持ち、あなたの拾う骨を受け止めるでしょう。

妹尾 文恒 「──ここだけの話ですが」

語り手 さくり、と骨が一つ。骨壺に入ります。

エド・ウォーデン 「……ええ、なんでしょうか」

妹尾 文恒 「十三は人を殺して食っていたようなのです」
「はっきりと確証がある訳ではありませんが、一年前、弟の部屋から異臭がして、床板を剥がしてみた所、人間の歯がごっそりと出てきました」
「きっとこれは食べられなかったのでしょう。ほら――骨はよく焼けば脆いですから」
「そんな不吉な穴は、とうに埋めてしまいましたが」

エド・ウォーデン 「そう……なのですか。それは……」
「確かに骨は、食べづらそうです」
こつん、とひとつ壺に入れる。

妹尾 文恒 「ねぇセンセ。あれは気狂いだったのです。もはや取り返しのつかぬ、完全な、気狂いだったのですよ」

語り手 最後にあなたは手の骨を拾うでしょう。十三が死ぬ前、あなたに振っていたあのやせ細った手です。

エド・ウォーデン 「………」
……骨を……ひとつ、持ち帰ることは可能でしょうか。
文恒さんに告げるべきだろうか。

語り手 ……さようですか。ちなみに、どの骨を。

エド・ウォーデン どの……もう一つの小指の先の骨を。

語り手 承知いたしました。人の目がありますから、<隠す>をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=75 【隠す】 (1D100<=75) > 51 > 成功

語り手 あなたは十三の…左手の小指の骨に、そうと指を伸ばして絡め。

エド・ウォーデン 「………」

語り手 どこぞで迷子になって心細くしていた幼子の手を引くように、約束の指きりを交わすように、優しく小指を引き寄せたのでした。
骨をすべて拾い終わると、骨壺に蓋がされました。
軽く高い音を最後に、彼の骨を、死を、すっかりあの小さな壺のなかに閉ざしたのです。
 
 
 
──骨を拾い終えると、周囲から「サク、コリ、シャクシャク」と、何か脆いものを噛み砕いているような音がします。
見渡せば、周囲の人間が我を争うようにして、拾いきれない小さな骨を口に含んでいるでしょう。
よく見れば、斎場の人間もそれをしています。
異様な光景に0/1の正気度喪失。

エド・ウォーデン CCB<=60 【SANチェック】 (1D100<=60) > 60 > 成功

語り手 斯様な状況においても、辛うじて正気は守られたようですね。

エド・ウォーデン 「………」
なにを、と口を動かす程度でとどまったようです。

妹尾 文恒 「センセイ、さあ、十三の骨を食べてください。さあ――ねえセンセイ。どうしたのですか。なぜ骨を、センセイ。さあ。さあ。さあ。さあ。さあ」

語り手 目の血走る文恒が、あなたの手に十三の骨を押し付けます。
いつの間にか、見知らぬ十数人に取り囲まれ、とても穏便に断れる状況ではありません。
辺りにむせるような獣臭が立ち込めます。
自分を取り囲む人間たちや、文恒の唇の中央が、犬のようにつり上がっていることに気づくでしょう。

エド・ウォーデン 「……あなた方は」
「十三君の骨を私に食わせて、どう、なさるつもりなのです」

語り手 あなたの後頭部が誰かに掴まれ、焼き場へと突き出されます。

エド・ウォーデン 「うっ……!?」

語り手 目の前には妹尾十三の、白い骨片が。
ここで選択肢が大きく分けて3つあります。
彼らの言う通り、十三の骨を食べるか。
<隠す>を成功させ、食べたふりをするか。※1クリのクリチケ以外で振り直し不可
……このまま、毅然とした態度で断り続けるかです。

妹尾 文恒 「さあ、さあ、さあ、センセイ」

語り手 …他に、この状況下でできそうな行動があれば提案いただいても構いません。

エド・ウォーデン わかりました。ぬ……毅然とした態度といっても……ううん……
わかりました。隠す、を振りましょう。
いちどきり、ですね……。

語り手 ええ。……どうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=75 【隠す】 (1D100<=75) > 32 > 成功

語り手 あなたは…文恒から渡された骨を掌に受け取り。
──食べたふりをして袖口に骨を仕舞いこみました。
それを見た文恒が拍手をします。

妹尾 文恒 「ああ、センセイ。よかった、よかった」

語り手 どうにか袖口に隠した骨は、見破られることはありませんでした。

エド・ウォーデン 「……… ……よかった…?」

妹尾 文恒 「これで弟も浮かばれましょう」

語り手 続いて、周りに数十人いた彼らの拍手が続く。
文恒はそれで満足したと見え、薄い唇をさらに薄く伸ばして微笑みます。
辺りに立ち込める獣じみた臭気が一層濃くなりました。
周囲の人間の目が黄色く、皮下に厚ぼったく重なるどろりとした脂肪のように、いやらしく光っています。
ぺちゃぺちゃと、舌舐めずりのような音さえ聞こえ──もはや一時もここへは居られないと思うほど、脅迫めいた重圧が満ち充ちていくのでした――。
POW×5をどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=(13*5) 【POW】 (1D100<=65) > 25 > 成功

語り手 …………。
あなたは一切の動揺も示さず、骨拾いを終わらせました。葬儀の場を後にしたウォーデン先生を追うものはなく、あなたは無事自宅へと戻れることでしょう。

エド・ウォーデン そう……ですか。
文恒さんのことが気にかかりますが……まだ色々とやることがあるのでしょうね。

語り手 ──────
全てが終わり、幾日も経たない日。長閑な、何事もない日、正午前。
関東一帯を巨大な地震が襲った。
柳川県内では、二万戸超の家屋が全潰し、焼失し、多くの混乱を齎した。
津波は貧民窟を海へ攫い、死者は底濱市だけで一万を数える。
妹尾邸も、池田脳病院も倒壊し、燃え尽き――
そして、彼らの行方は、誰も知らない。
──異説・狂人日記 了。
エンドB:
1D10の正気度ポイント回復
探索者生還。

エド・ウォーデン ああ……ありがとうございました。
お疲れ様でございました……。
いや……ううん……
うーーん…
1d10 SAN回復 (1D10) > 2

system [ エド・ウォーデン ] SAN : 60 → 62

語り手 お疲れ様でございました。

エド・ウォーデン ありがとうございます。
すべて、手を放してしまったような気がします、ね……

語り手 ふふ。気になる事も多いでしょうから、シナリオ背景もご紹介させていただきますね。

エド・ウォーデン よろしくお願いいたします。(あと、少々机の前から離れます。直ぐ戻ります)

情報

妹尾 十三 妹尾 十三
STR5 CON7 POW6 DEX8 APP13 SIZ9 INT16 EDU14
二十一歳男性。先天性睾丸欠損症。少年時代、同級生から乱暴を受けて、精神に変調を来たした。裕福な家庭であったため、私室を改造した部屋で四年ほど監置されながら、一年前まで探索者の往診を受けていた。偏執病であり、しばしば周囲の人間が自分に害をなそうとしていると言っては暴れだすことがあった。寛解時(病症が落ち着いているとき)は、ごく穏やかで物静かな青年である。兄の用意する薬(=人魄)を長期間服用することによって、心身が食屍鬼に近づいている。現在は池田脳病院に入院しているが、『ここが自宅であり、担当医の真崎は下男(下働きの男性)である』と思い込んでいる。正気と狂気の狭間で世界で、周囲の人間こそが人食いだと認識した十三は、探索者に助けを求めるため便箋と万年筆を調達し、灯台守の男に手紙を託したのであった。

妹尾 文恒 妹尾 文恒
STR11 CON13 POW13 DEX15 APP11 SIZ12 INT15 EDU17
三十一歳男性。十三の兄だが、養子であり血の繋がりはない。病身の弟を哀れに思い献身的に面倒を見てきたが、一年ほど前に両親が相次いで病死し、それを境に十三の病状が急速に悪化する。ついに文恒は、両親の遺した土地を売り払い、十三を脳病院へ入れる決断をする。
神経が衰弱気味であるがその他は健康。骨接を生業にしており、東洋医学に興味がある。
本草学の大著『本草綱目』に人体の薬物利用に関する記述を発見し、首吊死体の真下に溜まる体液と土の入り混じった薬(=人魄)を、長期間に渡り十三に服用させていた。

真崎 敬之 真崎 敬之
STR14 CON14 POW18 DEX12 APP9 SIZ16 INT17 EDU20
五十五歳男性。池田脳病院の医師。長身痩躯、表情は乏しく、声に感情を乗せずに喋る。心理学に長けた者から見れば、これが自分の心理を読み取らせないよう意図的に行っているものと分かるだろう。
探索者とは学会等で顔を合わせることもあり、互いに会えば挨拶を交わす程度の知り合いである。
精神医学に関しては現状を良しとしておらず、どちらかと言えば革新的な立場を取っている。

灯台守 灯台守の男
STR17 CON16 POW7 DEX13 APP1 SIZ10 INT10 EDU6
元人間の食屍鬼。貧民窟の生まれで、長年に渡り人の屍肉を食らっている内に変貌した。理知的な個体であり、探索者が進んで敵対しようとしない限り争うことはない。

語り手 《シナリオの真相》
探索者は大正十二年を生きる精神科医だ。かつて自身の患者であった妹尾十三からの手紙を受けた探索者は、一年ぶりに会いに行く。そこで彼の口から聞かされたことは、「この街には無数の人食いの怪物がいて、人間と成り代わろうとしている」という、妄言としか思えないものだった。
妹尾十三は、現在の病院に入院する以前、兄の用意した薬を長年に渡り服用していた。それは首吊り自殺者の死体の真下から掬った泥を元に作った薬であり、体液や汚物が染み込んだ悍ましい薬であった。薄暗い監置室でそのようなものを摂取し続ける内に、彼の心身は食屍鬼に近づいてしまう。
彼の知覚する世界は真っ当な正気の世界から外れていき、それはやがて周囲をも巻き込み始める。世界が歪み、狂気と正気とが混じり合っていくその街で、探索者は自我を保ち続けることができるのか――。

メイン

エド・ウォーデン 戻りました。……斯様なことがありましたか。
文恒さん……十三君……

語り手 「さて、最後にもう一つ。あなたの知るべき真相があります」
「実のところ、『私』の記した描写は『あなた』の視点から見た現実であり、それが他者から見える現実と同じとは限らないのです」
「もっと分かりやすい言葉を使うと…」

信頼できない語り手 「『信頼できない語り手』をご存知でしょうか。<知識>ロールをどうぞ」

エド・ウォーデン CCB<=85 【知識】 (1D100<=85) > 75 > 成功

信頼できない語り手 「博識でいらっしゃる。『信頼できない語り手』とは、叙述トリックの一つであることをあなたは知っていました。読者や観客を惑わせたりミスリードしたりするものですね。正確には普通一人称小説でもちいられるものですが、TRPGというものはマスターから提示される情報を一人称視点で見て物語を進めるので、親和性が高いのでしょう」
「続いて<アイデア>ロールをどうぞ」

エド・ウォーデン CCB<=85 【アイデア】 (1D100<=85) > 46 > 成功

信頼できない語り手 「『あなた』がこれまで見てきたもののなかで、いくつかおかしな点に気づけるでしょう」
「妹尾十三は一年前に池上脳病院に入れられ、そこで初めて真崎に出会ったことは想像に難くありません。だというのに、なぜ破かれた日記に『下男の真崎』が登場しうるのでしょう。日記は私宅監置中で書かれたらしい、つまり脳病院に入院するまえに書かれたものです。不思議ですね」
「もうひとつ、分かりやすいのは妹尾十三の私室の床板です。あれが剥がれているように見えていたのは、さて世界が歪んでしまったのか、あなたの正気と狂気が混じり合ってしまったのか──」
「誰も教えてくれるものはいません」
「…いったい『あなた』はどこまで正気だったのでしょうね」
「本セッションはここまでとなります。長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました」

情報

注記 成長ロールは後日集計となります。
本日は長時間のお付き合い、ありがとうございました。

メイン

エド・ウォーデン ……ああ、なるほど……。
なるほど、本日は本当に 有難うございました

雑談

藺草 有難うございました……喋らないほうがいいかしら……はわ…

語り手 喋っても構いませんよ。

藺草 なるほど……喋りますね……
いや、本日は素敵なシナリオにお招き頂き有難うございました。
なるほど、おかしな部分が……なるほどと思う次第でございます。

エド・ウォーデン 語彙が少ないのに感想を言おうするので同じような言葉を述べ連ねてしまいますね。
十三君……文恒さん……彼らに思いを馳せるばかり。
どうして……いずれにせよ救えなかったのでしょうが、後悔が……。

妹尾 十三 センセ、僕の骨はいったいどうなさるおつもりでしょうか。

エド・ウォーデン うん……? 小瓶に入れて、大切に大切にもち続けていますよ。

妹尾 十三 僕はこれからもセンセと一緒なのですね、嬉しいです。

エド・ウォーデン 君の希望通り、食べてしまうことはできませんでしたが。
……ああ、そう思ってくれるのですね……。

藺草 どうしてこんなに慕ってくれるのか……いや、医者と患者だからそうなるように接していたのでしょうね。

語り手 お優しい先生ですね。

エド・ウォーデン そうでしょうか……。そうあれるようにしていたのかも知れないですね。
私は……一体……
なるほど骨を食べると…なるほど……(何かを手にとって読んでいる

語り手 ふふ。そうなのですよ。実は末代にまで影響があるようで。

エド・ウォーデン 大変なことに……いや、でも実質血を混ぜた、ということになるのでしょうね……
十三君の紹介欄……

語り手 『先天性睾丸欠損症』ですか?
彼は子どもを成せない体質なのです。

エド・ウォーデン ですです……。なので、こう……
だのに、彼の因子は受け継がれる、ということもあるのだと。

語り手 ええ。こうして彼の血を受け継ぐことは、なんとも不思議な心地です。

藺草 やはり……なるほど、そうなのですね……
(別のお話に参加された子孫の方を見つつ

語り手 ああ……あれですか。あれは本当は人を喰わぬように一人で山に生きていたようですが…。

藺草 成程理性が強い……。でも人との繋がりができた、と……。
今後が……楽しみですね。
今からでも食べるか? エドヴァルド……

語り手 骨はございますよ。
震災後であれ、妹尾邸の跡地に向かえば、あなたが戻した小指の末節骨も見つかるでしょう。

エド・ウォーデン いえ……。目に見えていないと不安なようです。
もし見つかるようあれば、二つ並べて置いておくでしょう。(瓶に入れてカラコロ)
こう……たまに気があれして口の中に含むくらいはするかも知れませんが……。
いや、しません…おそらくは。

語り手 両手の小指ですね。愛らしい。

エド・ウォーデン そうですね。可愛い子でした……。
次は……幸福な運命の元に生まれるように祈っておりますとも。

藺草 毅然と断り続けたら大変なことになってますねこれは あぶない

語り手 ああ、阿呆船ですか。ございますよ。シーンの準備は。

藺草 わぁーーーーっ ひぇえ
怖い。助けて灯台守さん。

語り手 気づくと、見知らぬ船の上だった。辺りには世にも奇妙な扮装をした人間たちが、涎を垂らし、わめき、泣きじゃくり、自慰行為に耽っている。漕手のひとりも見当たらない船が、何処かへ滑るように進んでいく。どこからか、奇妙な抑揚をつけた経のようなものが聞こえてくる。ひとり、ふたりと、呼応するように、全ての人間がそれを歌い始める。やがて大合唱になっていく。視界が歪み、頭がおかしくなっていく。
ああア――アア――あああ。
凡そ世の中、ないもの尽し、
多い中にも、今年のないものたんとない、
人食い骨噛みめったにない。首縊り騒動途方もない、
ここで縊るもお縄がない。それにお棺の担ぎ手もない、
一人や二人じゃ仕方がない、お首がどこかへ失せてない、
お船あっても櫂がない、ご相談しようも正気がない。
身内の毛穴がゾクゾク粟立つ、そんじょ、そこらの地獄の話じゃ……チャカポコチャカポコチャカポコチャカポコ……。
極彩色の曼荼羅の海、どこが天かも、分からない。自分と他人の境目も混ざり、なにがなんだか分からなくなる。
狂気の船はどこまでも、阿呆を乗せて進んでいく。正気の方がいかほど不幸か。船はどこまでも進んでいく。涎の海を進んでいく。
1D10/1D100の正気度喪失。

灯台守 こればっかりは己も助けに行けねえや。

エド・ウォーデン CCB<=60 【SANチェック】 (1D100<=60) > 46 > 成功
1d10 減少 (1D10) > 10
わぁ

語り手 アイデアをどうぞ。

エド・ウォーデン CCB<=85 【アイデア】 (1D100<=85) > 52 > 成功
アララ…

語り手 狂気、狂気、狂気。終わることのない狂熱。欠けたお椀を叩く音。チャンチキチャンチキ、チキトントン。極彩色に彩られた虚妄の狂宴。笑声が響き、混ざり、混ざり、混ざり合う。
チャンチキチャンチキ、チキトントン。
チャンチキチャンチキ、チキトントン。
チャンチキチャンチキ、チキトントン――。
数え切れないほどの数、阿呆を乗せた阿呆船、大海原をどこまでも、チャンチキチャンチキ進んでいく。
阿呆に混ざった新たな阿呆、その後の行方は誰も知らない。
──この場合ですと、ロストとなります。ですがこちらのSANチェックはクリティカルチケットによる振り直しを許容していますので。
1d10を延々と振り直すのでしょうね。

エド・ウォーデン ふふ……任せてください。減少SANダイスでろくな目にあったことが有りません。
間違いなく狂気に陥るでしょう。意地を張らずに隠すを振ってよかった。
万が一骨をいただくにしても……ああいった形は不本意ですしね……

語り手 立ち回りの上手な先生ですね。
私も人前で食べるかどうかは迷いましたが……いずれ食べるのであれば、今でもよいかなと。

エド・ウォーデン むん……褒め言葉として受け取っておきましょう。
成程……食べるつもりが強ければ、その手もありでしたね……。

語り手 焼き場の骨を自分用に隠すご提案は初めてでしたね。

エド・ウォーデン そうだったんですか……。いえ、食べるにしろ食べないにしろ……日記にあああったのと、意味深に手の描写が合ったので…。

語り手 ああ…あの手の描写は、ウォーデン先生が十三くんに振り返してくれたので。親切心で入れました。

エド・ウォーデン うう……有難うございます。骨を拾う描写も嬉しかったです。
中にいる人などは泣いておりました。

妹尾 十三 にこっ

エド・ウォーデン かわいらしい ぐぬぬ……
どうして死んでしまったの……

語り手 彼の死因については、本当のところ自殺であったのかどうかさえもシナリオ内では名言されておりません。どうなのでしょうね。

エド・ウォーデン 委ねる、ということなのでしょうか……。
そうですね、骨接の医者が縊死の通報を……のあたりのことなど思い出すと、文恒さんの犯行である可能性もあるのでしょうか。
しかしもう、全て終わってしまった……。
真崎先生は一体何だったんだ。普通の野心家でしょうか

語り手 ええ。もうその文恒と連絡を取る事すらできません。
真崎先生の正体も、不明であるままです。

エド・ウォーデン ええ……?? 正体…?
でも心理学であれしてくるということは人間……だったらいいなあ。
ビフテキ……
わあ

語り手 さあ……
そういえば、真崎医師の心理学には全て/4の補正がかかっていました。

エド・ウォーデン なるほど……。それは全く読めないわけですね。
わあ~ 最近おっしゃられていた”合う”というのはこれのことだったのですね。
parede……

語り手 ええ。阿呆船に。
未だこの船に乗る探索者に会えませんね。

藺草 ひぇえ……ぞっとして震えてしまいますね……
……十三くんもこれに乗ったということは、最後まで正気で固辞したのでしょうか。
誰よりも理性的で真っ直ぐな十三君……

エド・ウォーデン 憶測でしか有りませんねこれは。

語り手 しかしまっすぐであったことは確かでしょう。その素直さのままにあなたへ思慕の念を向けていました。

エド・ウォーデン 素直すぎた……。

語り手 彼は…もう少し、長生きをしても良かったとは思いますけどね。
ああ、でもほら。彼の血を途絶えさせない方法はありますよ。(にこにこしながら小瓶を指さす

エド・ウォーデン 血ではなく、存在ではなく……思い出は胸のうちにありますから。
それにこの様々な思いをリアルに後世に残したい、という気持ちでもないのだと思います。

語り手 あなたはあなたの中に、その思い出を大切にしまっておくのですね。

エド・ウォーデン そのつもりです。
いつか……誰かに話すかも知れませんが。今のところそんな相手はいないですね。

藺草 存在はなくても……といっても見えてないと不安とかいってる……何を言っとるんだ

語り手 もしも私があなたの死を見届けることがあったら、その小瓶は一緒に棺に入れて差し上げましょう。そんな機会など無いと思いますが。

エド・ウォーデン なるほど……有難うございます。
もしご縁があれば、そのときは。
死後の世界か……。家にある宗教学の本にでも目を通してみるか。

藺草 そんなに染みては来ないと思うけど、頭には残るだろう。ううむ……
ううむ………

成長

注記 成長チャンスは最大3回までといたします。

図書館  2
目星   3
水泳   1
隠す   3
医学   3
薬学   2
信用   1
心理学  3

 ※技能値が90を超えたら即時2d6SAN回復

雑談

エド・ウォーデン 集計有難うございます。サッと振ってしまいますね。
すごい、聞き耳がない

成長

注記 ※クリチケについて
1枚あたり通常の成長チェック1回できます。(1d10)
ただし、初期値技能については成長チェック飛ばして1d10成長させていよいです。

雑談

語り手 なぜでしょうね…すべて失敗されてますね…

エド・ウォーデン どうして…? 目星のほうが低いのに…

成長

エド・ウォーデン 2b100>60 【図書館】 (2B100>60) > 76,18 > 成功数1
1d10 図書館成長 (1D10) > 2
3b100>45 【目星】 (3B100>45) > 25,91,66 > 成功数2
2d10 目星成長 (2D10) > 14[9,5] > 14
ナシ (1D10) > 8
3b100>75 【隠す】 (3B100>75) > 71,65,70 > 成功数0
3b100>75 【医学】 (3B100>75) > 68,14,29 > 成功数0
2b100>61 【薬学】 (2B100>61) > 59,8 > 成功数0
1b100>15 【信用】 (1B100>15) > 82 > 成功数1
1d10 信用成長 (1D10) > 5
3b100>70 【心理学】 (3B100>70) > 34,25,96 > 成功数1
1d10 心理学成長 (1D10) > 5
CCB<=25 【水泳】(上記成長チェック) (1D100<=25) > 3 > 決定的成功/スペシャル
うわ

語り手 ふふ。

エド・ウォーデン どうしてこう……いえ、生きて帰れたのでヨシ。
クリチケは何でチャレンジをしましょうか……。聞き耳…? 耳よ良くなってくれ。
2b100<=51 【聞き耳】 (2B100<=51) > 65,96 > 成功数0
なんだこれ、つまり成功だな…
2d10 聞き耳成長(クリチケ分) (2D10) > 12[10,2] > 12
これにてお仕舞いになります。有難うございました。

語り手 はい。お疲れ様でございました。

雑談

エド・ウォーデン さて……お世話になりました。
今回のことをシナリオを読みつつ咀嚼してまいります。
朝早くからこのような時間まで、わたくしに時間を割いて頂き誠にありがとうございました。

藺草 演出に、登場人物のロールプレイに、ファンブル処理に……素敵要素がいっぱいでした!
とっても楽しかったです!

語り手 こちらこそ。招待に応じていただき、ありがとうございました。長い時間、本当にお疲れ様でございます。

エド・ウォーデン はい。それでは、今日のところは失礼いたします。
また機会があえばお会いしたいものです。では、また。

語り手 また会う日まで、どうかお元気で。
それまでは、左様なら。ウォーデン先生。

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語り手  ────────────

  異説・狂人日記
   
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著:エドゥアルド・ウォーデン

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